等級

Magnitude

光量子説

光子

定義

振動数 ν\nu,波長 λ\lambda の光子 11 つが持つエネルギー ε\varepsilon は,プランク定数を hh,光速を cc として次のように与えられる。

ε=hν=hcλ\varepsilon=h\nu = \dfrac{hc}{\lambda}
説明

右辺は伝搬速度 vv,振動数 ff,波長 λ\lambda の波について成り立つ波のの基本公式

v=fλv=f\lambda

により導かれる。アインシュタインはこの式を提唱するにあたり,光のエネルギーの量子である光子の存在を仮定し,光は粒子の性質をもちうるとした。詳細は物理の原子物理,電磁気学を見よ。


物質に光を照射すると,物質中の電子は励起され,ときに放出される。これを光電効果という。1905年,アインシュタインはこれを理論的に説明するために,光は粒子の性質をもつという光子論説を提唱した。

量子効率

定義

物質に NpN_\text{p} 個の光子を照射して NeN_\text{e} 個の電子が励起または放出されたとき,量子効率 η\eta は次のように与えられる。

η=NeNp\eta = \dfrac{N_\text{e}}{N_\text{p}}

全光エネルギー

公式

天体が発した振動数 ν\nu の光子を量子効率が η\eta の物質に照射して NN 個の電子が励起または放出されたとき,光の全エネルギー EE はプランク定数 hh を用いて次のように求める。

E=NηhνE = \dfrac{N}{\eta}h\nu
導出

入射した光子の数を NpN_\text{p} とすると

η=NNp\eta = \dfrac{N}{N_\text{p}}

光子 11 つのエネルギを ε\varepsilon とすると,光の全エネルギー E=NpεE = N_\text{p}\varepsilon だから,ε=hν\varepsilon=h\nu より

E=Npε=NηhνE = N_\text{p}\varepsilon = \dfrac{N}{\eta}h\nu

光

光の直進性

定義

光は障害物のない一様な媒質中では常に直進する。

説明

光が直進するようすはユークリッド空間か非ユークリッド空間かで異なる。

ユークリッド空間では,ある直線とその上にない 11 つの点があるとき,その点を通って元の直線に平行であるような直線は 11 本だけ引くことができる(平行性公準)。この空間では光は一定の方向へ,どこまでも交わらず,永遠にまっすぐ突き進む。

非ユークリッド空間の典型例である球面では,並走させた 22 本の光は次第に近づき,必ず交わる。一方もう一つの典型例である双曲面では並走させた 22 本の光は互いに離れてゆく。

いずれにしても光はその空間における最短距離を進むことに変わりはない。

電磁場のエネルギー保存則

定義

ある閉じた領域内の電磁場において,単位時間あたりに減少したエネルギーの総量を PallP_{\mathrm{all}},その領域から外へ流れ出た単位時間あたりのエネルギーを PoutP_{\mathrm{out}},領域内で電場が電荷に対して単位時間あたりにおこなった仕事を PworkP_{\mathrm{work}} とすると,それらの関係は次のように与えられる。

Pall=Pout+PworkP_{\mathrm{all}}=P_{\mathrm{out}}+P_{\mathrm{work}}
説明

厳密には電磁波の振る舞いを決める 44 つのマクスウェル方程式のうち,時間変化に関係するファラデーの電磁誘導の法則とアンペール・マクスウェルの法則から次のように導かれる,ポインティングの定理より求める。以下,左辺(および一部は右辺第一項)では電場ベクトルを E\boldsymbol{E},電束密度ベクトルを D\boldsymbol{D},磁場ベクトルを H\boldsymbol{H},磁束密度ベクトルを B\boldsymbol{B} とし,右辺第二項では電流密度ベクトルを j\boldsymbol{j},時刻を tt としている。

−∂∂t(12E⋅D+12H⋅B)=∇⋅(E×H)+j⋅E-\dfrac{\partial }{\partial t}\left(\dfrac{1}{2}\boldsymbol{E}\cdot \boldsymbol{D}+\dfrac{1}{2}\boldsymbol{H}\cdot \boldsymbol{B}\right)=\nabla \cdot (\boldsymbol{E}\times \boldsymbol{H})+\boldsymbol{j}\cdot \boldsymbol{E}

これを表面積が SS であるような閉じた体積 VV で空間積分し,ガウスの発散定理

∫V∇⋅(E×H) dV=∮S(E×H)⋅dA\int_V \nabla\cdot(\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H})\,\mathrm{d}V = \oint_S (\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H})\cdot\mathrm{d}\boldsymbol{A}

を用いて変形すると,次のような積分形を得る。これは与式 Pall=Pout+PworkP_{\mathrm{all}}=P_{\mathrm{out}}+P_{\mathrm{work}} と対応する。詳しくは電磁気学を見よ。

−ddt∫V(12E⋅D+12H⋅B)dV⏟Pall=∮S(E×H)⋅dA⏟Pout+∫Vj⋅E dV⏟Pwork\underbrace{-\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\int _{V}\left(\dfrac{1}{2}\boldsymbol{E}\cdot \boldsymbol{D}+\frac{1}{2}\boldsymbol{H}\cdot \boldsymbol{B}\right)\mathrm{d}V}_{P_\mathrm{all}}=\underbrace{\oint _{S}(\boldsymbol{E}\times \boldsymbol{H})\cdot \mathrm{d}\boldsymbol{A}}_{P_\mathrm{out}}+\underbrace{\int _{V}\boldsymbol{j}\cdot \boldsymbol{E}\,\mathrm{d}V}_{P_\mathrm{work}}

いずれの表し方にしても,途中でエネルギーが消滅あるいは増加することがないことが示されている。

平均光度

定義

時間 Δt\Delta t あたりに放出された光の全エネルギーが ΔE\Delta E であるような天体の平均光度 LavgL_\text{avg} は次のように与えられる。

Lavg=ΔEΔtL_\text{avg} = \dfrac{\Delta E}{\Delta t}
説明

光度とは,単位時間あたりに放出された光の全エネルギーをいう。地学ないし天文学における「光度」と,光学における「光度」は本質的に異なるものである。また,光学において全方向へ放出されるエネルギーの総量のことを「光度」というが,この用語は地学・天文学ではほとんど用いない。

光度

公式

光度 LL は,天体が全方向に放射する光の全エネルギー EE と時刻 tt を用いて次のように求める。

L=dEdtL = \dfrac{\mathrm{d}E}{\mathrm{d}t}
導出

時刻 tt において天体が全方向に放射する光の全エネルギーを tt の関数として E(t)E(t) と表すとき,時刻 t+Δt  (Δt>0)t+\Delta t \; (\Delta t>0) における光の全エネルギーは E(t+Δt)E(t+\Delta t) である。時刻 tt から t+Δtt+\Delta t までの平均光度 LavgL_\mathrm{avg} は

Lavg=E(t+Δt)−E(t)(t+Δt)−tL_\mathrm{avg} = \dfrac{E(t+\Delta t) - E(t)}{(t+\Delta t) - t}

ここで時刻 tt における瞬間の光度を求めるには Δt\Delta t を限りなく 00 に近づけることを考えればよい。導関数の定義より

L=lim⁡Δt→0E(t+Δt)−E(t)Δt=dEdtL = \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{E(t+\Delta t) - E(t)}{\Delta t} = \dfrac{\mathrm{d}E}{\mathrm{d}t}

放射フラックス

定義

面積が AA の面を垂直に通過する光のエネルギーを EE,時刻を tt とするとき,放射フラックス FF は次のように与えられる。

F=∂2E∂A∂tF = \dfrac{\partial ^2E}{\partial A \partial t}
導出

放射フラックスは,ある面を単位時間あたり および 単位面積あたりに垂直に通過する光エネルギーだから,位置 r⃗\vec{r} を含む微小面 ΔA\Delta A を,時刻 tt から t+Δtt+\Delta t の間に通過する光エネルギーを ΔE\Delta E とすると,この微小範囲における放射フラックスの平均 FavgF_\mathrm{avg} は

Favg=ΔEΔAΔtF_\mathrm{avg} = \dfrac{\Delta E}{\Delta A \Delta t}

特定の位置および瞬間における放射フラックス FF を求めるには,Δt→0\Delta t \to 0 および ΔA→0\Delta A \to 0 の極限を考えればよい。まず,時間に関する極限をとると,微小面 ΔA\Delta A を単位時間あたりに通過するエネルギー ΔΦ\Delta \Phi は

ΔΦ=lim⁡Δt→0ΔEΔt=∂(ΔE)∂t\Delta \Phi = \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{\Delta E}{\Delta t} = \dfrac{\partial (\Delta E)}{\partial t}

さらに,面積を限りなく 00 に近づける極限をとって FF を得る。

F=lim⁡ΔA→0ΔΦΔA=lim⁡ΔA→01ΔA(lim⁡Δt→0ΔEΔt)=∂2E∂A∂tF = \lim_{\Delta A \to 0} \dfrac{\Delta \Phi}{\Delta A} = \lim_{\Delta A \to 0} \dfrac{1}{\Delta A} \left( \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{\Delta E}{\Delta t} \right) = \dfrac{\partial^2 E}{\partial A \partial t}
説明

「放射フラックス」は "radiant flux" の訳語で,訳し方や分野などによって「放射流束」「輻射流束」などとも呼ばれる。


受光面の面積 AA と時刻 tt は,互いに独立な変数として扱う。もし受光面が時間とともに変化するような場合でも,放射フラックス FF は受光面の幾何学的変化を除外した光そのものの空間的なエネルギー密度を表すため,面積を固定した偏微分 ∂∂t\dfrac{\partial}{\partial t} を用いて定義してよい。

このとき,面積 AA と時刻 tt は独立変数であり,シュワルツの定理から ΔA→0\Delta A \to 0 と Δt→0\Delta t \to 0 の極限をとる順序を逆にしても,得られる FF は変わらない。

点光源による逆二乗の法則

公式

光度 LL の点光源から距離 rr だけ離れた真空中のある点において,光の進行方向に垂直な面が受ける放射フラックス FF は次のように求める。ただし途中でエネルギーの吸収や散乱はないものとする。

F=L4πr2F = \dfrac{L}{4\pi r^2}
導出

点光源を原点とし,原点を中心とする半径 rr の球面を SS とする。 空間の等方性および光の直進性より,光は原点から動径方向に直進するため,球面 SS 上の任意の点において光の進行方向は球面に対して垂直である。また,対称性から球面 SS 上の放射フラックス FF の大きさは一定である。

放射フラックスの定義 F=∂2E∂A∂tF = \dfrac{\partial ^2E}{\partial A \partial t} より,球面上の微小面積 dA\mathrm{d}A を単位時間あたりに通過するエネルギーは

d(dEdt)=F dA\mathrm{d}\left(\frac{\mathrm{d}E}{\mathrm{d}t}\right) = F \, \mathrm{d}A

したがって,球面 SS 全体を単位時間あたりに通過するエネルギーは,これを球面全体で積分して

∫SF dA=F∫SdA\int_{S} F \, \mathrm{d}A = F \int_{S} \mathrm{d}A

ここで,球面 SS の表面積は,xyxy 平面上の曲線 y=r2−x2(−r≤x≤r)\displaystyle y = \sqrt{r^2 - x^2} \quad (-r \le x \le r) を xx 軸のまわりに回転させた回転面の表面積として求まるから

dydx=−xr2−x2\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} = -\dfrac{x}{\sqrt{r^2 - x^2}}

より微小弧長は

1+(dydx)2  dx=1+x2r2−x2 dx=rr2−x2 dx\sqrt{1 + \left(\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}\right)^2\,} \, \mathrm{d}x = \sqrt{1 + \frac{x^2}{r^2 - x^2}} \, \mathrm{d}x = \frac{r}{\sqrt{r^2 - x^2}} \, \mathrm{d}x

したがって球面の表面積 ∫SdA\displaystyle\int_{S} \mathrm{d}A は

∫−rr2πy1+(dydx)2  dx=∫−rr2πr2−x2⋅rr2−x2 dx=∫−rr2πr dx=4πr2\int_{-r}^{r} 2\pi y \sqrt{1 + \left(\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}\right)^2\,} \, \mathrm{d}x = \int_{-r}^{r} 2\pi \sqrt{r^2 - x^2} \cdot \frac{r}{\sqrt{r^2 - x^2}} \, \mathrm{d}x = \int_{-r}^{r} 2\pi r \, \mathrm{d}x = 4\pi r^2

ゆえに球面 SS 全体を単位時間あたりに通過するエネルギーは

F∫SdA=4πr2FF \int_{S} \mathrm{d}A = 4\pi r^2 F

途中でエネルギーの吸収や散乱がないから,電磁波のエネルギー保存則により,光源から単位時間あたりに放射される全エネルギーである光度 L=dEdtL = \dfrac{\mathrm{d}E}{\mathrm{d}t} は,球面 SS 全体を単位時間あたりに通過する全エネルギーに等しい。したがって

L=4πr2FF=L4πr2\begin{aligned} L &= 4\pi r^2 F\\ F &= \frac{L}{4\pi r^2} \end{aligned}

輻射流束ベクトル

公式

原点に位置する光度 LL の大きさのある天体が真空中で等方的に光を放射するとき,位置ベクトル r\boldsymbol{r} における輻射流束ベクトル F\boldsymbol{F} は次のように求める。ただし途中でエネルギーの吸収や散乱はないものとする。

F=L4π∣r∣2r∣r∣\boldsymbol{F}=\dfrac{L}{4\pi |\boldsymbol{r}|^2} \dfrac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|}
導出

原点を中心とする半径 RR の薄い一様な球殻(全光度 LL)を考え,位置ベクトルを r\boldsymbol{r} にある点を P\mathrm{P},その大きさを r=∣r∣>Rr = |\boldsymbol{r}| > R とする。原点から点 P\mathrm{P} へ向かう方向を zz 軸とし,その単位ベクトルを ez=r∣r∣\boldsymbol{e}_z = \dfrac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|} とする直交座標系をとると,点 P\mathrm{P} の位置ベクトル r\boldsymbol{r} は

r=(00r)\boldsymbol{r} = \begin{pmatrix} 0 \\ 0 \\ r \end{pmatrix}

ここで,球殻上の点 Q\mathrm{Q} の位置ベクトルを rQ\boldsymbol{r}_\mathrm{Q} とし,位置ベクトル rQ\boldsymbol{r}_\mathrm{Q} と zz 軸がなす角を θ\theta,位置ベクトル rQ\boldsymbol{r}_\mathrm{Q} の xyxy 平面への正射影ベクトルと xx 軸がなす角を φ\varphi とすると,点 Q\mathrm{Q} の位置ベクトル rQ\boldsymbol{r}_\mathrm{Q} は

rQ=(Rsin⁡θcos⁡φRsin⁡θsin⁡φRcos⁡θ)\boldsymbol{r}_\mathrm{Q} = \begin{pmatrix} R\sin\theta\cos\varphi \\ R\sin\theta\sin\varphi \\ R\cos\theta \end{pmatrix}

この点 Q\mathrm{Q} を含む球殻上の微小面素を考えると,その微小な縦の長さは R dθR\,\mathrm{d}\theta,微小な横の長さは Rsin⁡θ dφR\sin\theta\,\mathrm{d}\varphi であるから,微小面積 dA\mathrm{d}A は

dA=R2sin⁡θ dθ dφ\mathrm{d}A = R^2 \sin\theta \, \mathrm{d}\theta \, \mathrm{d}\varphi
極角
40°
方位角
45°

位置ベクトル を指定する極角 と方位角 を微小変化させたときの球殻上の領域を考える。

縦の長さ半径 の円周上で角度が だけ広がるため,弧長は となる。
横の長さ 軸からの水平回転半径は である。この円周上で方位角が 広がるため,弧長は となる。
(縦)(横)

球殻全体の表面積は 4πR24\pi R^2 であり,球殻全体から等方的に光が放出されるので,面積比からこの微小面素が放つ微小光度は

dL=L⋅dA4πR2=L4πsin⁡θ dθ dφ\mathrm{d}L = L \cdot \frac{\mathrm{d}A}{4\pi R^2} = \frac{L}{4\pi} \sin\theta \, \mathrm{d}\theta \, \mathrm{d}\varphi

点 Q\mathrm{Q} から点 P\mathrm{P} へ向かう光の進行方向の相対位置ベクトル r−rQ\boldsymbol{r} - \boldsymbol{r}_\mathrm{Q} をベクトル s\boldsymbol{s},その大きさを ss とすると

s=(0−Rsin⁡θcos⁡φ0−Rsin⁡θsin⁡φr−Rcos⁡θ)=(−Rsin⁡θcos⁡φ−Rsin⁡θsin⁡φr−Rcos⁡θ)\begin{aligned} \boldsymbol{s} &= \begin{pmatrix} 0 - R\sin\theta\cos\varphi \\ 0 - R\sin\theta\sin\varphi \\ r - R\cos\theta \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} -R\sin\theta\cos\varphi \\ -R\sin\theta\sin\varphi \\ r - R\cos\theta \end{pmatrix} \end{aligned}

したがって光の進行方向の単位ベクトル n=ss\boldsymbol{n} = \dfrac{\boldsymbol{s}}{s} は

n=(−Rsin⁡θscos⁡φ−Rsin⁡θssin⁡φr−Rcos⁡θs)\boldsymbol{n} = \begin{pmatrix} -\dfrac{R\sin\theta}{s}\cos\varphi \\[10pt] -\dfrac{R\sin\theta}{s}\sin\varphi \\[10pt] \dfrac{r - R\cos\theta}{s} \end{pmatrix}

ここで △OPQ\triangle \mathrm{OPQ} において線分 QP\mathrm{QP} と zz 軸のなす角を α\alpha とおくと,正弦定理より Rsin⁡θs=sin⁡α\dfrac{R\sin\theta}{s} = \sin\alpha,また zz 軸への正射影より r−Rcos⁡θs=cos⁡α\dfrac{r - R\cos\theta}{s} = \cos\alpha が成り立つから,単位ベクトル n\boldsymbol{n} は

n=−sin⁡αcos⁡φ ex−sin⁡αsin⁡φ ey+cos⁡α ez\boldsymbol{n} = -\sin\alpha\cos\varphi \, \boldsymbol{e}_x - \sin\alpha\sin\varphi \, \boldsymbol{e}_y + \cos\alpha \, \boldsymbol{e}_z

点光源による逆二乗則より,微小面素が点 P\mathrm{P} に生じさせる微小な輻射流束ベクトル dF\mathrm{d}\boldsymbol{F} は

dF=dL4πs2n\mathrm{d}\boldsymbol{F} = \dfrac{\mathrm{d}L}{4\pi s^2} \boldsymbol{n}

これを球殻全体 φ∈[0,2π], θ∈[0,π]\varphi \in [0, 2\pi], \, \theta \in [0, \pi] にわたって積分することを考えると,各単位ベクトル ex,ey,ez\boldsymbol{e}_x, \boldsymbol{e}_y, \boldsymbol{e}_z の係数を Fx,Fy,FzF_x, F_y, F_z として

dF=L16π2sin⁡θs2(−sin⁡αcos⁡φ ex−sin⁡αsin⁡φ ey+cos⁡α ez)dθ dφ∫球殻dF=L16π2∫0π∫02πsin⁡θs2(−sin⁡αcos⁡φ ex−sin⁡αsin⁡φ ey+cos⁡α ez)dφ dθF=Fxex+Fyey+Fzez\begin{aligned} \mathrm{d}\boldsymbol{F} &= \dfrac{L}{16\pi^2} \dfrac{\sin\theta}{s^2} \Big( -\sin\alpha\cos\varphi \, \boldsymbol{e}_x - \sin\alpha\sin\varphi \, \boldsymbol{e}_y + \cos\alpha \, \boldsymbol{e}_z \Big) \mathrm{d}\theta \, \mathrm{d}\varphi\\[8pt] \int_{\text{球殻}} \mathrm{d}\boldsymbol{F} &= \dfrac{L}{16\pi^2} \int_0^\pi \int_0^{2\pi} \dfrac{\sin\theta}{s^2} \Big( -\sin\alpha\cos\varphi \, \boldsymbol{e}_x - \sin\alpha\sin\varphi \, \boldsymbol{e}_y + \cos\alpha \, \boldsymbol{e}_z \Big) \mathrm{d}\varphi \, \mathrm{d}\theta\\[8pt] \boldsymbol{F} &= F_x \boldsymbol{e}_x + F_y \boldsymbol{e}_y + F_z \boldsymbol{e}_z \end{aligned}

ここで,中心軸に対する回転対称性より,距離 ss および角度 α\alpha は方位角 φ\varphi に依存しないので,ex\boldsymbol{e}_x および ey\boldsymbol{e}_y 成分における φ\varphi の積分を独立して考えることができる。

∫02πcos⁡φ dφ=[sin⁡φ]02π=0\displaystyle\int_0^{2\pi} \cos\varphi \, \mathrm{d}\varphi = \Big[ \sin\varphi \Big]_0^{2\pi} = 0

より,xx 成分について

Fx=−L16π2∫0πsin⁡αs2sin⁡θ(∫02πcos⁡φ dφ)dθ=−L16π2∫0πsin⁡αs2sin⁡θ⋅(0) dθ=0\begin{aligned} F_x &= -\dfrac{L}{16\pi^2} \int_0^\pi \dfrac{\sin\alpha}{s^2} \sin\theta \left( \int_0^{2\pi} \cos\varphi \, \mathrm{d}\varphi \right) \mathrm{d}\theta\\[8pt] &=-\dfrac{L}{16\pi^2} \int_0^\pi \dfrac{\sin\alpha}{s^2} \sin\theta \cdot (0) \, \mathrm{d}\theta = 0 \end{aligned}

同様に

∫02πsin⁡φ dφ=[−cos⁡φ]02π=0\int_0^{2\pi} \sin\varphi \, \mathrm{d}\varphi = \Big[ -\cos\varphi \Big]_0^{2\pi} = 0

より,yy 成分について

Fy=−L16π2∫0πsin⁡αs2sin⁡θ(∫02πsin⁡φ dφ)dθ=−L16π2∫0πsin⁡αs2sin⁡θ⋅(0) dθ=0\begin{aligned} F_y &=-\dfrac{L}{16\pi^2} \int_0^\pi \dfrac{\sin\alpha}{s^2} \sin\theta \left( \int_0^{2\pi} \sin\varphi \, \mathrm{d}\varphi \right) \mathrm{d}\theta\\[8pt] &= -\dfrac{L}{16\pi^2} \int_0^\pi \dfrac{\sin\alpha}{s^2} \sin\theta \cdot (0) \, \mathrm{d}\theta = 0 \end{aligned}

一方

∫02π1 dφ=2π\int_0^{2\pi} 1 \, \mathrm{d}\varphi = 2\pi

より,zz 成分について

Fz=L⋅2π16π2∫0πcos⁡αs2sin⁡θ dθ=L8π∫0πcos⁡αs2sin⁡θ dθF_z = \dfrac{L \cdot 2\pi}{16\pi^2} \int_0^\pi \dfrac{\cos\alpha}{s^2} \sin\theta \, \mathrm{d}\theta = \dfrac{L}{8\pi} \int_0^\pi \dfrac{\cos\alpha}{s^2} \sin\theta \, \mathrm{d}\theta

ここで △OPQ\triangle \mathrm{OPQ} における余弦定理より

cos⁡α=s2+r2−R22sr\cos\alpha = \frac{s^2 + r^2 - R^2}{2sr}

および

s2=R2+r2−2Rrcos⁡θs^2 = R^2 + r^2 - 2Rr\cos\theta

が成り立つ。後者の両辺を全微分すると R2+r2R^2+r^2 は定数だから

2s ds=2Rrsin⁡θ dθsin⁡θ dθ=sRr ds\begin{aligned} 2s \, \mathrm{d}s &= 2Rr\sin\theta \, \mathrm{d}\theta\\ \sin\theta \, \mathrm{d}\theta &= \dfrac{s}{Rr} \, \mathrm{d}s \end{aligned}
極角
48°
方位角
60°
観測点距離
8.5m

中心 ,観測点 ,微小面素の位置 がなす三角形 に余弦定理を適用する。

三角形の辺球の半径 ,観測点の距離 ,面素と観測点間の距離 である。
注目する角 軸と のなす角が , 軸(視線方向)と線分 のなす角が である。
[角 について]
[角 について]
現在の値 ,

r>Rr > R より θ\theta が 00 から π\pi まで変化するとき ss は r−Rr - R から r+Rr + R まで変化するから

Fz=L8π∫0πcos⁡αs2sin⁡θ dθ=L8π∫r−Rr+R1s2(s2+r2−R22sr)(sRr ds)=L16πRr2∫r−Rr+R(1+r2−R2s2)ds=L16πRr2[s−r2−R2s]r−Rr+R=L16πRr2⋅4R=L4πr2\begin{aligned} F_z &= \dfrac{L}{8\pi} \int_0^\pi \dfrac{\cos\alpha}{s^2} \sin\theta \, \mathrm{d}\theta\\[8pt] &= \frac{L}{8\pi} \int_{r-R}^{r+R} \frac{1}{s^2} \left( \frac{s^2 + r^2 - R^2}{2sr} \right) \left( \frac{s}{Rr} \, \mathrm{d}s \right) \\[8pt] &= \frac{L}{16\pi R r^2} \int_{r-R}^{r+R} \left( 1 + \frac{r^2 - R^2}{s^2} \right) \mathrm{d}s\\ &=\frac{L}{16\pi R r^2} \left[ s - \frac{r^2 - R^2}{s} \right]_{r-R}^{r+R}\\ &= \frac{L}{16\pi R r^2} \cdot 4R \\ &= \frac{L}{4\pi r^2} \end{aligned}

r=∣r∣r=|\boldsymbol{r}| および単位ベクトル ez=r∣r∣\boldsymbol{e}_z = \dfrac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|} から,求める輻射流束ベクトル F\boldsymbol{F} は

F=Fzez=L4π∣r∣2r∣r∣\begin{aligned} \boldsymbol{F} &= F_z\boldsymbol{e}_z\\ &=\dfrac{L}{4\pi |\boldsymbol{r}|^2} \dfrac{\boldsymbol{r}}{|\boldsymbol{r}|} \end{aligned}

等級

等級と放射フラックスの関係

定義

22 つの天体 X\text{X},Y\text{Y} の等級の差がちょうど 55 であるとき,それぞれの放射フラックス FXF_\text{X},FYF_\text{Y} の関係は次のように与えられる。

FYFX=100\dfrac{F_\text{Y}}{F_\text{X}}=100
説明

古代ローマの学者プトレマイオス(83年ごろ - 168年ごろ)は著作『アルマゲスト』で,古代ギリシアの天文学者ヒッパルコス(紀元前190年ごろ - 紀元前120年ごろ)の説を引用する形で,肉眼で見える最も明るい星々を 11 等星,見えなくなる限界の微かな星々を 66 等星として 66 段階に分類した。

その後,ウィリアム・ハーシェル(1738年 – 1822年)や息子のジョン・ハーシェル(1792年 – 1871年)の功績により,等級 mm が 11 増えるごとに放射フラックスが公比 rr で減衰する等比関係が見出され, 11 等星は 66 等星の約100100 倍の明るさがあることが実測された。

放射フラックスの等比関係

定義

等級差が 11 であるような 22 つの天体の放射フラックス FF と F′F^\prime の比は一定である。

FF′=const.\dfrac{F}{F^\prime}=\text{const.}

ポグソンの式

公式

22 つの天体の等級差 mX−mYm_\mathrm{X}-m_\mathrm{Y} はそれぞれの放射フラックス FXF_\mathrm{X},FYF_\mathrm{Y} を用いて次のように求める。

mX−mY=−52log⁡10(FXFY)m_\mathrm{X}-m_\mathrm{Y}=-\dfrac{5}{2}\log_{10}\left(\dfrac{F_{\mathrm{X}}}{F_{\mathrm{Y}}}\right)
導出
導出1

天体の見かけの明るさを表す等級 mm を放射フラックス FF の滑らかな関数 m(F)m(F) とみなす。天体が明るいほど等級の値は小さくなるから,m(F)m(F) は FF に関する単調減少関数である。

等級差が 11 である天体間の放射フラックス比が一定であることから,微小な等級の変化 dm\mathrm{d}m が放射フラックスの相対的変化率 dFF\dfrac{\mathrm{d}F}{F} に比例する。したがって正の比例定数 CC を用いて

dmdF=−CF\frac{\mathrm{d}m}{\mathrm{d}F} = -\frac{C}{F}

両辺を天体 Y\mathrm{Y} の状態 (FY,mY)(F_\mathrm{Y}, m_\mathrm{Y}) から天体 X\mathrm{X} の状態 (FX,mX)(F_\mathrm{X}, m_\mathrm{X}) まで定積分すると

∫FYFXdmdF dF=−C∫FYFX1F dFmX−mY=−C[log⁡F]FYFXmX−mY=−Clog⁡(FXFY)\begin{aligned} \int_{F_\mathrm{Y}}^{F_\mathrm{X}} \frac{\mathrm{d}m}{\mathrm{d}F} \, \mathrm{d}F &= -C \int_{F_\mathrm{Y}}^{F_\mathrm{X}} \frac{1}{F} \, \mathrm{d}F\\ m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} &= -C \Big[ \log F \Big]_{F_\mathrm{Y}}^{F_\mathrm{X}}\\ m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} &= -C \log\left(\frac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}}\right) \end{aligned}

対数の底を変換する数学公式より log⁡x=log⁡10⋅log⁡10x\log x = \log 10\cdot \log_{10} x だから,定数 k=Clog⁡10k = C \log 10 を用いて

mX−mY=−klog⁡10(FXFY)m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} = -k \log_{10}\left(\frac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}}\right)

ここで,天体 X\mathrm{X} と Y\mathrm{Y} の等級の差が 55,すなわち mX−mY=5m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} = 5 であるとき,放射フラックスの比は FXFY=10−2\dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}} = 10^{-2} だから

5=−klog⁡10(10−2)=2kk=52\begin{aligned} 5 &= -k \log_{10}(10^{-2}) \\ &= 2k\\ k &= \dfrac{5}{2} \end{aligned}

したがって

mX−mY=−52log⁡10(FXFY)m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} = -\frac{5}{2} \log_{10}\left(\frac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}}\right)
導出2

等級差が 11 であるときの放射フラックス比は一定だから,この定数を kk (ただし k>1k > 1)とおくと,等級が 11 小さい(11 等級明るい)天体の放射フラックスは元の天体の放射フラックスの kk 倍である。したがって等級 mXm_\mathrm{X},mYm_\mathrm{Y} をもつ 22 つの天体 X\mathrm{X},Y\mathrm{Y} の放射フラックス FX,FYF_\mathrm{X},F_\mathrm{Y} の比は

FXFY=kmY−mX\dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}} = k^{m_\mathrm{Y} - m_\mathrm{X}}

ここで mX−mY=5m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} = 5,すなわち mY−mX=−5m_\mathrm{Y} - m_\mathrm{X} = -5 のとき,FXFY=1102=10−2\dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}} = \dfrac{1}{10^2} = 10^{-2} が成り立つから,これを (1)(1) 式に代入すると

10−2=k−5k=1025\begin{aligned} 10^{-2} &= k^{-5} \\ k &= 10^{\frac{2}{5}} \end{aligned}

したがってフラックス比 FXFY\dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}} は

FXFY=(1025)mY−mX=1025(mY−mX) \dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}} = \left(10^{\frac{2}{5}}\right)^{m_\mathrm{Y} - m_\mathrm{X}} = 10^{{\frac{2}{5}}(m_\mathrm{Y} - m_\mathrm{X})}

両辺の常用対数 log⁡10\log_{10} をとって mX−mYm_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} について整理すると

log⁡10(FXFY)=25(mY−mX)mX−mY=−52log⁡10(FXFY)\begin{aligned} \log_{10}\left(\dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}}\right) &= \dfrac{2}{5}(m_\mathrm{Y} - m_\mathrm{X})\\ m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} &= -\dfrac{5}{2} \log_{10}\left(\dfrac{F_\mathrm{X}}{F_\mathrm{Y}}\right) \end{aligned}

ベガ等級

定義

ベガ等級では,こと座のベガの等級を 00 とする。

説明

ポグソンの式よりある天体の等級 mm と放射フラックス FF の関係は,00 等星の放射フラックスを F0F_0 として

m−0=−52log⁡10(FF0)m=−52log⁡10(FF0)\begin{aligned} m - 0 &= -\frac{5}{2}\log_{10}\left(\frac{F}{F_0}\right)\\[8pt] m &= -\frac{5}{2}\log_{10}\left(\frac{F}{F_0}\right) \end{aligned}

等級 mm を決定するためには,00 等星のフラックス F0F_0 を決定しなければならない。星は種類によって表面温度が異なり,それによって放つ光の色すなわち波長が異なることから,様々な色の星を観測するときに常に基準とできるような星を選択する必要があった。そこで,可視光のすべての色をより満遍なく放出する星としてこと座のベガが選ばれた。

なお近年,ベガはわずかに明るさが周期的に変化する変光星であったこと,ベガの周囲に大量の塵が分布し赤外線などの特定の光の波長のエネルギーが実際より多く見積もられていたこと,ベガの自転が非常に速いことから横に大きく膨らむ回転楕円体であり極と赤道部分で表面温度が大きく変わることなどがわかってきたため,キャリブレーション目的に使用されることが多い。このときは厳密には約 0.030.03 等星として扱われる。


整数 nn を用いて等級 mm の星を nn 等星と呼び表すとき,nn は次の式を満たす。

n−0.5≤m<n+0.5n - 0.5 \le m < n + 0.5

すなわち次のような対応となる。

nn 等星等級の範囲代表的な天体の例
−1-1 等星−1.5≤m<−0.5-1.5 \le m < -0.5カノープス(−0.74-0.74 等)
00 等星−0.5≤m<+0.5-0.5 \le m < +0.5ベガ(+0.03+0.03 等) リゲル(+0.13+0.13 等)
11 等星+0.5≤m<+1.5+0.5 \le m < +1.5アルタイル(+0.76+0.76 等) デネブ(+1.25+1.25 等)
22 等星+1.5≤m<+2.5+1.5 \le m < +2.5北極星(ポラリス)(+1.98+1.98 等)
33 等星+2.5≤m<+3.5+2.5 \le m < +3.5オリオン座のミンタカ(+2.23∼2.35+2.23 \sim 2.35 等)(変光星)
66 等星+5.5≤m<+6.5+5.5 \le m < +6.5肉眼で見える限界の暗い星々

例えばベガは 00 等星だが,夜空で一番明るい星々の総称をいう広義の意味で 11 等星と呼び表されることも多い。そのほか以下の 2121 の星のうち,厳密に 11 等星であるのはその半分ほどであるが,いずれも多く 11 等星と呼び表される。

明るさ順星の固有名星座見かけの等級nn 等星
1シリウスおおいぬ座−1.46-1.46 等−1-1 等星
2カノープスりゅうこつ座−0.74-0.74 等−1-1 等星
3リギル・ケンタウルスケンタウルス座−0.27-0.27 等−1-1 等星
4アークトゥルスうしかい座−0.05-0.05 等−1-1 等星
5ベガこと座+0.03+0.03 等00 等星
6カペラぎょしゃ座+0.08+0.08 等00 等星
7リゲルオリオン座+0.13+0.13 等00 等星
8プロキオンこいぬ座+0.34+0.34 等00 等星
9アセルナルエリダヌス座+0.46+0.46 等00 等星
10ベテルギウスオリオン座+0.50+0.50 等前後00 等星 〜 11 等星(※変光星)
11ハダル(β\beta 星)ケンタウルス座+0.61+0.61 等11 等星
12アルタイル(彦星)わし座+0.76+0.76 等11 等星
13アルデバランおうし座+0.85+0.85 等11 等星
14アンタレスさそり座+1.09+1.09 等前後11 等星(※変光星)
15スピカおとめ座+0.97+0.97 等11 等星
16ポルックスふたご座+1.14+1.14 等11 等星
17フォーマルハウトみなみのうお座+1.16+1.16 等11 等星
18デネブはくちょう座+1.25+1.25 等11 等星
19ミモザ(β\beta 星)みなみじゅうじ座+1.25+1.25 等11 等星
20アクルックス(α\alpha 星)みなみじゅうじ座+1.25+1.25 等11 等星
21レグルスしし座+1.35+1.35 等11 等星

フラックス密度

定義
単位周波数あたりのフラックス密度

周波数が ν\nu であるような電磁波の周波数あたりのフラックス密度 SνS_{\nu} は,放射フラックス FF を用いて次のように与えられる。

Sν=dFdνS_{\nu}=\dfrac{\mathrm{d}F}{\mathrm{d}\nu}
単位波長あたりのフラックス密度

波長が λ\lambda であるような電磁波の周波数あたりのフラックス密度 SλS_{\lambda} は,放射フラックス FF を用いて次のように与えられる。

Sλ=dFdλS_{\lambda}=\dfrac{\mathrm{d}F}{\mathrm{d}\lambda}
説明

"flux density" の訳語である。放射流束密度や分光放射照度ということもあるが,後者は光学的意味合いが強い。


「フラックス密度」と呼び表すときは,一般には単位周波数あたりのことをいう。波長とは主に添え字を使って区別することが一般的で,単位周波数あたりの場合は SνS_{\nu},単位波長あたりの場合は SλS_{\lambda} などと表す。

二つのフラックス密度の関係

公式

真空中の天体から放射される電磁波の単位周波数あたりのフラックス密度 SνS_{\nu} は,観測バンドの代表波長 λ\lambda と単位波長あたりのフラックス密度 SλS_{\lambda} の関係は次のように表す。ただし真空中における光速を cc とする。

Sν=λ2cSλS_\nu = \dfrac{\lambda^2}{c} S_\lambda
導出

電磁波の周波数 ν\nu と波長 λ\lambda の間には,真空中における光速 cc を用いて波の基本公式より次の関係が成り立つ。

ν=cλ\nu = \dfrac{c}{\lambda}

ある微小波長区間に含まれる放射フラックスと,それに対応する微小周波数区間に含まれる放射フラックスは等しい。波長が増加すると周波数は減少するため,微小区間の幅の大きさ ∣dλ∣|\mathrm{d}\lambda| および ∣dν∣|\mathrm{d}\nu| を用いると,この微小帯域を通過する微小放射フラックス dF\mathrm{d}F は

dF=Sλ∣dλ∣=Sν∣dν∣\mathrm{d}F = S_\lambda |\mathrm{d}\lambda| = S_\nu |\mathrm{d}\nu|

両辺を λ\lambda について微分すると

dνdλ=−cλ2\frac{\mathrm{d}\nu}{\mathrm{d}\lambda} = -\frac{c}{\lambda^2}

ゆえに微小変化幅の大きさの間には次の関係が成り立つ。

∣dν∣=cλ2∣dλ∣|\mathrm{d}\nu| = \frac{c}{\lambda^2} |\mathrm{d}\lambda|

これを Sλ∣dλ∣=Sν∣dν∣S_\lambda |\mathrm{d}\lambda| = S_\nu |\mathrm{d}\nu| に代入すると,∣dλ∣≠0|\mathrm{d}\lambda| \neq 0 より

Sλ∣dλ∣=Sν(cλ2∣dλ∣)Sλ=cλ2SνSν=λ2cSλ\begin{aligned} S_\lambda |\mathrm{d}\lambda| &= S_\nu \left( \frac{c}{\lambda^2} |\mathrm{d}\lambda| \right)\\ S_\lambda &= \frac{c}{\lambda^2} S_\nu\\ S_\nu &= \frac{\lambda^2}{c} S_\lambda \end{aligned}

AB等級

定義

AB\text{AB} 等級において,すべての周波数において等級 00 に相当するフラックス密度 S0S_0 はゼロ等フラックスと呼び,次の値で与えられる。

S0=103.56  [Jy]S_0 = 10^{3.56} \;[\mathrm{Jy}]
説明

フラックス密度の単位は SI\text{SI} 単位系で W/(m2⋅Hz)\text{W/(m}^2\cdot\text{Hz)} と表される。しかし,太陽系外の電波源として最も電波が強い天体として知られるカシオペア座Aであっても,その大きさが最大となる周波数帯で約 2.5×10−23∼3×10−23  W/(m2⋅Hz)2.5 \times 10^{-23} \sim 3 \times 10^{-23} \;\text{W/(m}^2\cdot\text{Hz)} ほどとオーダーが非常に小さいので,Jy\text{Jy}(ヤンスキー)という単位が使われるようになった。


103.56  [Jy]10^{3.56}\;[\mathrm{Jy}] は計算すると 3630.7805...[Jy]3630.7805... [\mathrm{Jy}] である。簡易的に 3631[Jy]3631 [\mathrm{Jy}] と表すこともある。

見かけの等級

公式

地球から観測できる真空中の天体の AB\text{AB} 等級 mABm_\text{AB} は,天体から放射される電磁波の単位周波数あたりのフラックス密度 SνS_{\nu} を用いて次のように求める。ただしゼロ等フラックスを S0S_0 とする。

mAB=−52log⁡10(SνS0)=−2.5log⁡10Sν+8.9\begin{aligned} m_\text{AB} &= -\dfrac{5}{2}\log_{10}\left(\dfrac{S_\nu}{S_0}\right)\\ &= -2.5 \log_{10} S_\nu + 8.9 \end{aligned}
導出

ある天体の放射フラックス FF に対し,周波数が ν\nu である電磁波の周波数あたりのフラックス密度は Sν=dFdνS_\nu = \dfrac{\mathrm{d}F}{\mathrm{d}\nu} と与えられる。周波数 ν\nu まわりの微小な周波数幅 dν\mathrm{d}\nu をもつ単色光を観測したとき,この微小帯域を通過する微小放射フラックス dF\mathrm{d}F は

dF=Sν dν\mathrm{d}F = S_\nu \, \mathrm{d}\nu

ここで,同一の観測周波数 ν\nu および微小帯域幅 dν\mathrm{d}\nu において観測される任意の 22 つの天体 X,Y\mathrm{X}, \mathrm{Y} を考える。それぞれのフラックス密度を Sν,X, Sν,YS_{\nu, \mathrm{X}}, \, S_{\nu, \mathrm{Y}} とすると,受光される微小放射フラックスの比は

dFXdFY=Sν,X dνSν,Y dν=Sν,XSν,Y\frac{\mathrm{d}F_\mathrm{X}}{\mathrm{d}F_\mathrm{Y}} = \frac{S_{\nu, \mathrm{X}} \, \mathrm{d}\nu}{S_{\nu, \mathrm{Y}} \, \mathrm{d}\nu} = \frac{S_{\nu, \mathrm{X}}}{S_{\nu, \mathrm{Y}}}

したがってこの微小帯域における 22 つの天体の等級差に対してポグソンの式を適用すると

mX−mY=−52log⁡10(Sν,XSν,Y)m_\mathrm{X} - m_\mathrm{Y} = -\frac{5}{2}\log_{10}\left(\frac{S_{\nu, \mathrm{X}}}{S_{\nu, \mathrm{Y}}}\right)

したがって観測対象の天体として等級 mABm_\text{AB} およびフラックス密度 SνS_\nu,比較対象の基準天体として等級 00 およびフラックス密度 S0S_0 をとれば

mAB−0=−52log⁡10(SνS0)mAB=−52log⁡10(SνS0)\begin{aligned} m_\text{AB} - 0 &= -\frac{5}{2}\log_{10}\left(\frac{S_\nu}{S_0}\right)\\ m_\text{AB} &= -\frac{5}{2}\log_{10}\left(\frac{S_\nu}{S_0}\right) \end{aligned}

S0=103.56S_{0} = 10^{3.56} を代入して

mAB=−52log⁡10(Sν103.56)=−2.5(log⁡10Sν−3.56)=−2.5log⁡10Sν+8.9\begin{aligned} m_\text{AB} &= -\frac{5}{2}\log_{10}\left(\frac{S_\nu}{10^{3.56}}\right)\\ &= -2.5(\log_{10} S_{\nu} - 3.56)\\ &= -2.5\log_{10} S_{\nu} + 8.9 \end{aligned}
説明

1983年,天文学者のジョン・ビバリー・オーク(1928年 – 2004年)とジェームズ・エドワード・ガン(1938年 – )が共著論文で AB\text{AB} 等級を提唱した際の定義式は次のように cgs\text{cgs} 単位系 で表されていた。

mAB=−2.5log⁡10Sν−48.60m_\text{AB} = -2.5\log_{10} S_\nu - 48.60

cgs\text{cgs} 単位系とは,物理量を測る基本の単位としてセンチメートル(cm\text{cm}),グラム(g\text{g}),秒(s\text{s})の 33 つをベースにした単位系である。SI\text{SI} 単位系でエネルギー・仕事、熱量を表す J\text{J}(ジュール)に相当する単位としては erg\text{erg} が用いられ,1 erg=10−7 J1\text{\ erg}=10^{-7}\text{\ J} である。このとき 1  Jy1 \;\text{Jy} は次のように変換できる。

1 Jy=10−26 Wm2⋅Hz=10−26×107 erg/s104 cm2⋅Hz=10−26×103 erg/s/cm2/Hz=10−23 erg/s/cm2/Hz\begin{aligned} 1\ \text{Jy}&=10^{-26}\ \frac{\text{W}}{\text{m}^{2}\cdot \text{Hz}}\\ &=10^{-26}\times \frac{10^{7}\ \text{erg/s}}{10^{4}\ \text{cm}^{2}\cdot \text{Hz}}\\ &=10^{-26}\times 10^{3}\ \text{erg/s/cm}^{2}\text{/Hz}\\ &=10^{-23}\ \text{erg/s/cm}^{2}\text{/Hz} \end{aligned}

したがってこの単位系において SνS_\nu の単位は erg/s/cm2/Hz\text{erg/s/cm}^2\text{/Hz} となる。この単位系は特に非常に小さな値を扱う観測天文学において非常に有用で,現在も用いられている。

なお,ゼロ等フラックス S0S_0 が 103.56  [Jy]10^{3.56} \;[\mathrm{Jy}] のように指数を用いるのは,この定義式から単位変換などを経て逆算した結果である。


ある真空中の天体から放射された電磁波により,有効面積が AeffA_\text{eff} の大型望遠鏡のアンテナの温度が TAT_A であるとき,その天体のフラックス密度 SνS_\nu は次のように求められることがわかっている。

Sν=2kBTAAeffS_\nu = \dfrac{2 k_B T_A}{A_\text{eff}}

ここで,1 Jy\mathrm{Jy}(=10−26 W/m2/Hz=10^{-26} \text{ W/m}^2/\text{Hz})の電波をアンテナが受信したとき,アンテナ温度がちょうど 1 K1 \text{ K} 上がると仮定し,必要な受波面積 AeffA_\text{eff} を計算すると

10−26=2×(1.38×10−23)×1AeffAeff=2.76×10−2310−26≈2,760 m2\begin{aligned} 10^{-26}&=\frac{2\times (1.38\times 10^{-23})\times 1}{A_\text{eff}}\\ A_\text{eff}&=\frac{2.76\times 10^{-23}}{10^{-26}}\approx 2,760\text{\ m}^{2} \end{aligned}

アンテナが電波を集める効率を一般的な 60% 前後 と仮定すると,アンテナの実際の面積は 約 4,500  m24,500\;\mathrm{m^2} ほど,直径にして約 76  m76\;\mathrm{m} ほどであるが,1983年当時,世界最大の可動式単一鏡の口径が 100m100 \mathrm{m} 級であったことなどを考えると,偶然にも Jy\mathrm{Jy} の定義の仕方はこれによく整合する形となった。

ビッグバンの名残である宇宙背景放射の平均温度の 2.7255  K2.7255 \;\mathrm{K} などと比べても,アンテナ温度 1K1 \mathrm{K} は非常に小さな値であったといえる。これが単位 Jy\mathrm{Jy} が普及した一つの理由と言われている。


1950年代末〜1960年代初頭にかけて,電波天文学の最も重要な基礎カタログである第3ケンブリッジ電波源カタログ,通称3Cカタログが作成された。当時,カタログを作るために使われたケンブリッジ大学の電波干渉計は機材や大気から約 1.8  Jy1.8 \;\mathrm{Jy} 相当の誤差やノイズがあったため,信頼できるデータとして認めるためにノイズの5倍以上の強さを持つ天体が掲載の条件とされた。宇宙の起源はビッグバンか,それとも不変かなどの議論が盛んだった当時,暗い天体の数も重要視され,この下限が用いられた。

これらの理由から 11 以下の細かな数字もなく,大きいもので 2477  [Jy]2477 \; [\mathrm{Jy}] ほどとデータが見やすかったことも,単位 Jy\mathrm{Jy} が普及したもう一つの理由といわれる。

なお,現在の技術ではさらに微小な温度上昇の幅を測ることができるようになったため,mJy\mathrm{mJy} や μJy\mathrm{\mu Jy} といった単位もよく使われるようになっている。