1-1-1. 等級
Magnitude
光
放射束
放射束 は次のように,点光源が全方向に放射する全光エネルギーが を時刻 で微分することで得られる。
放射束とは「光源が単位時間あたりに放射する全エネルギー」である。時刻 において光源が全方向に放射する全光エネルギーを の関数として と表すとき,時刻 における全光エネルギーは である。時刻 から までの平均放射束 は
ここで時刻 における瞬間の放射束を求めるには を限りなく に近づけることを考えればよい。これは導関数の定義そのものに他ならない。したがって
放射流束
放射流束 は次のように,ある面を垂直に通過する光エネルギーが を時刻 および面の面積 で微分することで得られる。
放射流束とは「ある面を単位時間あたり・単位面積あたりに垂直に通過する光エネルギー」である。面積 の面を時刻 までに通過する光エネルギーを と表すとき,時刻 から ,面積 から の範囲において面を通過する光エネルギーの増分を とする。この範囲における平均放射流束 は
ここで,特定の位置および瞬間における放射流束を求めるには および を限りなく に近づけることを考えればよい。これは導関数の定義そのものに他ならず,まず を限りなく に近づけて
さらに を限りなく に近づけることで を得る。
放射流束ベクトル
放射束 の点光源を原点とする位置 における放射流束ベクトル は次のように表す。
放射流束ベクトルの大きさを とする。
導出1点光源を囲む半径 の閉じた球面 を考える。点光源から単位時間あたりに発生する全エネルギー,すなわち放射束を とすると,エネルギー保存則より,このエネルギーはすべて球面 を外部にむかって通過する。したがって微小面積ベクトルを とすると,球面全体を貫く流束の総和と放射束 の関係は
ここで,球面 上の微小な面積要素を ,その位置における外向きの単位法線ベクトルを とすると,微小面積ベクトルは と表される。球体の場合,中心から外側へ向かう方向(放射方向)がそのまま面の法線方向となるため,位置ベクトル を用いて と書ける。したがって,微小面積ベクトルは となり,式 は次のように書き換えられる。
点光源から全方位へ一様にエネルギーが放射されているため(球対称性),中心からの距離が等しい球面上では,放射流束の大きさ は常に一定である。また,流束の向きも真外(放射方向)を向いているため, と表せる。
数学公式 より,被積分関数の内積部分は
となる。大きさ は球面上いたる所で一定であるため,積分の外へ出すことができる。
残った は,半径 の球面 の全表面積 を表す。したがって
となり,放射流束の大きさ が求まる。
求めた大きさ に,動径方向の外向き単位ベクトル を掛け合わせることで,目的のベクトル形式の放射流束 が導かれる。
点光源を囲む半径 の閉じた球面 を考える。
球面 上の微小面積ベクトルを とすると
点光源を囲む半径 の閉じた球面 を考える。球面 上の微小な面積要素を ,その位置における外向きの単位法線ベクトルを とすると,微小面積ベクトル は
微小な面積要素 を考えるとき,その微小面を単位時間あたりに貫いて外部へ流出するエネルギーは,放射流束の法線方向成分を用いて
したがって,球面 全体を通って外部へ流出する単位時間あたりの総エネルギーは,この微小エネルギーを球面全体で足し合わせた面積積分だから
これがエネルギー保存則より光源の放射束 に等しいため,次の関係式が成り立つ。 エネルギー保存則より,単位時間あたりにこの球面 全体を貫いて外部へ流出する総エネルギーは光源の放射束 に等しい。
球対称性より,放射流束 は常に動径方向の単位法線ベクトル を向き,その大きさ は球面上いたる所で一定である。したがって
数学公式 より
これを に代入すると
半径 の球面 の全表面積が だから, より
これを に代入して
導出2光源が半径 の球体であり,内部で一様に光を放射しているとする。単位体積あたりの発光率を とすると,総放射束は である。光源外部の距離 にある観測点 における放射流束の大きさ を求める。対称性から放射流束は に向かう軸方向成分のみが残る。
① 薄い帯からの寄与 球中心から半径 ,厚み の薄い球殻について,中心と を結ぶ軸から角度 ,幅 の「薄い帯(円環)」を考える。 帯の体積は であり,帯からの放射束は である。帯から までの距離を ,光の到達方向が軸となす角を とすると,余弦定理より ,および が成り立つ。 帯から への放射流束の軸方向成分 は次のように表される。
② 球殻表面での積分 この帯を について から まで足し合わせる。 の両辺を微分すると となる。 積分範囲は のとき , のとき である。これらを代入して整理すると,半径 の球殻からの寄与 は
定積分を計算すると となるため, となる。
③ 体積全体での積分 これを球の中心 から表面 まで積分し,全体の放射流束 を求める。
全体の放射束 を用いて を消去すると,
これに動径方向の単位ベクトル を掛けることで,同様に式が導出される。
フルエンス
面積 の面を垂直に通過する全エネルギーが であるとき,単位面積あたりに到達した総エネルギーであるフルエンス は次のように表す。
「フルエンス」とは,一定の期間内に「単位面積あたりに到達したエネルギーの総量」のことである。放射流束が「瞬間的な光の強さ」であるのに対し,フルエンスは「ある期間に浴びた光の合計」を表す。
面積 の面に総量 のエネルギーが到達したとき,単位面積あたりに到達したエネルギー を求めることを考える。
このとき,次の比の式が成り立つ。
内項と外項の積は等しいから,
両辺を で割ることで,定義通りの式が導かれる。
また,放射流束の定義 を用いると, であるから,放射流束が一定であれば (放射流束 照射時間)とも表せる。
等級
等級
つの天体の放射流束 と の間に が成り立つとき,それぞれの等級 , の関係は次のように定める。
プトレマイオス(CE 2世紀)は著作『アルマゲスト(Almagest)』で,ヒッパルコス(BCE 2世紀)の説を引用する形で,肉眼で見える最も明るい星々を 等星,見えなくなる限界の微かな星々を 等星として 段階に分類した。ウィリアム・ハーシェル(William Herschel,1800〜1817年)が論文"On the Power of Penetrating into Space by Telescopes",Philosophical Transactions of the Royal Society of London (1800)で自作望遠鏡と絞り装置を用いて星の放射流束を計測。等級間の明るさの値が等比数列(一定の倍率)をなしていることを見出し, 等星は 等星の約 倍の明るさがあるという仮説を提示。ジョン・ハーシェル(John Herschel,1836 / 1847年)は Results of Astronomical Observations made at the Cape of Good Hope (1847) ではプリズム測光器を用いて星の光束を連続測定。等級 が 増えるごとに放射流束が公比 で減衰する等比関係を実測データで確かめた。
放射流束の等比関係
等級差が であるような つの天体の放射流束 と の関係式は次のように表す。
ジョン・ハーシェル(John Herschel,1836 / 1847年)は Results of Astronomical Observations made at the Cape of Good Hope (1847) でプリズム測光器を用いて星の光束を連続測定。等級 が 増えるごとに放射流束が一定比で減衰することを実測データで確かめた。
ポグソンの式
つの天体の等級差 はそれぞれの放射流束 , を用いて次のように求める。
等級差が であるときの放射流束比は一定だから,この定数を (ただし )とおくと,等級が 小さい( 等級明るい)天体の放射流束は元の天体の放射流束の 倍である。したがって等級 , をもつ つの天体 , の放射流束 の比は
ここで ,すなわち のとき, が成り立つから,これを 式に代入すると
これを 式に代入すると
両辺の常用対数 をとって について整理すると
等級0
波長によらず 3631Jy を 0mag としたものを AB 等級と呼ぶ
AB等級
周波数あたりの光束密度を とするとき,AB等級 は基準光束密度 を用いて次のように求める。
周波数によらず一定の光束密度 ()をもつ仮想的な天体を 等級()の絶対基準と定めている。したがって,ある天体の光束密度を ,その等級を とし,基準天体()との間でポグソンの式を適用することで
これに を代入すると
ここで,CGS単位系()における光束密度 を用いる場合, であるから となる。これを 式に代入して整理すると
となり,CGS単位系におけるAB等級の標準的な定義式が得られる。