2-1-3. 因数分解

Factorization

因数分解

公式

11 次以上の整式を A(x)A(x),ある整式を B(x)B(x) とし,この 22 つの積を展開して得られる整式を C(x)C(x) とおく。すなわち

C(x)=A(x)B(x)C(x) = A(x)B(x)

が成り立つとき,C(x)C(x)A(x)A(x) で割ると商が B(x)B(x) となって余りが 00 になる。

導出

整式の除法の原理より,任意の整式 C(x)C(x)11次以上の整式 A(x)A(x) で割ったとき

C(x)=A(x)Q(x)+R(x)(1)C(x) = A(x)Q(x) + R(x) \quad \dots (1)

を満たす商 Q(x)Q(x) と 余り R(x)R(x) がただ 11 組一意に存在する。ここで,余り R(x)R(x) の次数は,割る式 A(x)A(x) の次数よりも小さいか,または R(x)=0R(x) = 0 である。一方,仮定より C(x)C(x)A(x)A(x)B(x)B(x) の積だから

C(x)=A(x)B(x)(2)C(x) = A(x)B(x)\quad \dots (2)

が成り立つ。式 (1)(1)(2)(2) の右辺はともに C(x)C(x) に等しいので

A(x)B(x)=A(x)Q(x)+R(x)A(x)B(x) = A(x)Q(x) + R(x)

移項して A(x)A(x) でくくると,次式を得る。

A(x){B(x)Q(x)}=R(x)(3)A(x) \{ B(x) - Q(x) \} = R(x)\quad \dots (3)

ここで,B(x)Q(x)0B(x) - Q(x) \neq 0 であると仮定する。

このとき,B(x)Q(x)B(x) - Q(x) は何らかの整式(00 でない定数を含む)であるため,その次数は 00 以上である。左辺の次数を考えると,整式の積の次数はそれぞれの次数の和になるから,

(左辺の次数)=(A(x)の次数)+(B(x)Q(x)の次数)(A(x)の次数)(4)(左辺の次数) = (A(x)の次数) + (B(x) - Q(x)の次数) \geqq (A(x)の次数)\quad \dots (4)

となる。ここで,右辺 R(x)R(x) の次数は,除法の定義によりA(x)A(x) の次数よりも小さいから,(4)(4) 式と矛盾する。したがって仮定は誤りであり,B(x)Q(x)=0B(x) - Q(x) = 0 すなわち

Q(x)=B(x)Q(x) = B(x)

これを (3)(3) 式に代入すると, A(x)0=R(x)A(x) \cdot 0 = R(x) となり,R(x)=0R(x) = 0 を得る。

説明

もし A(x)A(x)00 になった場合、いわゆる 00 除算が許されない範囲においてどのように解釈するべきか、という疑念が生じる。厳密には、後述の環論において、割る式の主係数が単数である(実質的に最高次係数が 00 でない)ときだけ、この操作が許されることがわかっている。したがって A(x)A(x)11 次以上の整式であることを明記すればよい範囲では、考慮を要しない。

因数分解の諸公式

公式
22 数の完全平方式a2+2ab+b2=(a+b)2a22ab+b2=(ab)2\begin{aligned} a^2+2ab+b^2&=(a+b)^2\\ a^2-2ab+b^2&=(a-b)^2 \end{aligned}33 数の完全平方式a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)2a2+b2+c2+2ab2bc2ca=(a+bc)2a2+b2+c22ab2bc+2ca=(ab+c)2a2+b2+c22ab+2bc2ca=(abc)2\begin{aligned} a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca &= (a+b+c)^2 \\ a^2+b^2+c^2+2ab-2bc-2ca &= (a+b-c)^2 \\ a^2+b^2+c^2-2ab-2bc+2ca &= (a-b+c)^2 \\ a^2+b^2+c^2-2ab+2bc-2ca &= (a-b-c)^2 \end{aligned}22 数の完全立方式a3+3a2b+3ab2+b3=(a+b)3a33a2b+3ab2b3=(ab)3\begin{aligned} a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3 &= (a+b)^3 \\ a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3 &= (a-b)^3 \end{aligned}33 数の完全立方式a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca=(a+b+c)2a2+b2+c2+2ab2bc2ca=(a+bc)2a2+b2+c22ab2bc+2ca=(ab+c)2a2+b2+c22ab+2bc2ca=(abc)2\begin{aligned} a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca &= (a+b+c)^2 \\ a^2+b^2+c^2+2ab-2bc-2ca &= (a+b-c)^2 \\ a^2+b^2+c^2-2ab-2bc+2ca &= (a-b+c)^2 \\ a^2+b^2+c^2-2ab+2bc-2ca &= (a-b-c)^2 \end{aligned}
導出
説明

剰余の定理

公式

整式 P(x)P(x)11 次式 xαx - \alpha で割ったときの余りは P(α)P(\alpha) に等しい。

導出

整式の除法の原理より、任意の整式 P(x)P(x)11 次式 xαx - \alpha で割ったとき

P(x)=(xα)Q(x)+R(x)(1)P(x) = (x - \alpha)Q(x) + R(x) \quad \dots (1)

を満たす商 Q(x)Q(x) と余り R(x)R(x) がただ1組一意に存在する。ここで、余り R(x)R(x) の次数は、割る式 xαx - \alpha の次数(11 次)よりも小さいため、 R(x)R(x)xx を含まない定数となる。この定数を RR とおく。

(1)(1) はすべての xx について成り立つ恒等式だから、両辺に x=αx = \alpha を代入して整理すると

P(α)=(αα)Q(α)+R=0Q(α)+R=R\begin{aligned} P(\alpha) &= (\alpha - \alpha)Q(\alpha) + R\\ &= 0 \cdot Q(\alpha) + R\\ & = R \end{aligned}

因数定理

公式

整式 P(α)=0P(\alpha) = 0 であることは、 P(x)P(x)xαx - \alpha を因数に持つ、すなわち

P(x)=(xα)Q(x)P(x) = (x - \alpha)Q(x)

と因数分解できることと同値である。

導出

P(x)P(x)xαx - \alpha を因数に持つ、すなわち割り切れることは、余り RR00 であることと同値である。 したがって、剰余の定理 R=P(α)R = P(\alpha) より

P(α)=0    R=0P(\alpha) = 0 \iff R = 0

が成り立ち、 P(α)=0P(\alpha) = 0 であるときに限り P(x)P(x)xαx - \alpha を因数に持つことが示された。