1-1-1. 断定
Identity
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基本形
A
句法
A
書き下し
A
訳
A
文法
A
体言
文|終止形
論理式
例文
然
然り
その通りだ。
「然」は形容詞で「そうである」。または「正しい、その通りだ」形容詞ではあるが動詞のように訓読し、ラ行変格活用である。多く「曰、然。」の形で用いられる。例として、「王曰然」(王曰く然り)や、「皆曰然」(皆曰く然り)などがある。
幸甚
幸甚
非常にありがたい。〔滑稽列伝・史記〕
「幸甚」は非常にありがたい、たいへん幸せ。秦の始皇の時代、宮廷で酒宴が催された。そのとき雨が降り、階段の下で盾を持って警備する衛兵らが、雨に濡れて寒さに震えていた。秦の宮廷に仕える道化師、優旃は、これを見て彼らを哀れに思い、「お前たちは交代して休み(雨を避け)たいか?」と聞いたので、衛兵たちは皆、「幸甚(そうなれば大変ありがたいです)」と肯定・断定の意で返したものである。
君
子
務
本
君子本を務む
君子は根本を心がける。〔論語〕
「君子」は徳を持つ人。「務」は力を尽くす。「本」は根本、基本。孔子の弟子有子の言葉で、親に孝行し、兄弟を敬うことが「仁」の基本であると説いたものである。
説明
何らの漢字を伴わないもっとも単純でもっとも基本的な形である。Aにはどんな漢字も入れることができ、Aという意図が文全体の意図にそのまま採用される。したがって広義の意味ではすべての文がこの形をしているともいえるが、漢文の基本構文である主語・述語・目的語がそのまま表されている形をはじめ、ほかのいずれの句法をとらない文がこの単純な句法に分類される。
書き下しAにはどんな漢字も入れることができるため、書き下しもAのままである。
現代語訳Aに入る漢字の意味をそのまま訳すことができる。
文法Aには体言や活用語の終止形が入る。
A也
句法
A
也
書き下し
Aなり
訳
Aである
文法
A
名詞
文
論理式
例文
斉人曰「
鴈
也
」魯人曰
「
真
也
」
斉人曰く「鴈なり」魯人曰く「真なり」〔說林下・韓非子〕
斉の人は「(鼎は)偽物だ」といった。魯の人は「(鼎は)本物だ」といった。
「鴈」は「雁」の異体字であり、かつ「雁」は「贋」の字に通ずる。にせもの。「真」は本当のこと。斉の国が魯の国を攻め、魯の国宝である讒鼎という宝の鼎を要求した。魯の君主は本物を手放したくなかったため、偽物の鼎を送った。これを受けて斉の国の人々が「贋作だ」といい、魯は「本物だ」と主張したものである。
初
哉
首
基
肇
祖
元
胎
俶
落
權
輿
始
也
初、哉、首、基、肇、祖、元、胎、俶、落、権輿は、始めなり〔爾雅〕
「初」「哉」「首」「基」「肇」「祖」「元」「胎」「俶」「落」「權輿」はいずれも「はじめ」の意味である。
「初」は最初、はじめ(名詞)。「哉めて」は「載」の字に通じ、はじめて、最初は(副詞)。「首」は最初、発端、はじまり(名詞)。「基む」は開始する(動詞)。「肇む」は物事を創始する(動詞)。「祖」は起源、ある学説や宗派を開いた最初の人、根本、おおもと(名詞)。「元」は第一、物事の端緒(名詞)。「胎」は「能」の字に通じ、根源、きざし、はじめ(名詞)。「俶めて」は最初に(副詞)。「落む」は開始する(動詞)。「權輿」は物事の初め、芽生え、はじめる、創造する。爾雅は、五経などの古代の聖賢の書物(特に『詩経』)を正しく読み解くために、最も重要視された中国最古の辞書である。この辞書は、各地で使われた漢字の意味を解説するところから始まり、この例文はその最初の一文である。
天
賛
之
也
天之を賛くるなり。〔春秋左氏伝〕
天がこれ(=穀物が実るように)を助けているのである。
「天」は天地万物をつかさどるもの。「賛く」は助力する。后子は金に無頓着ではあったが先見の明はあった。秦の第12代君主桓公の寵愛を受けた子であるが、桓公の長男である景公(第13代君主)からの誅殺を恐れ、晋に亡命する。晋における著名な政治家であった趙武に無道の君主は滅びるだろう、と言われたときには、一代が無道でも、すぐに滅びるわけではない、それは天が助けているからだ、と答えた。このとき秦の君主はもって五年、趙武はもう先は長くはないだろうと述べ、いずれも后子の予見通りとなった。
是
是なり
正しい
「是」は形容詞で「正しい」。多く「曰、是。」の形で用いられる。「也」などが省略されることもあるが「是」については「なり」を付して訓読する。
導出
「也」は助詞で、よく断定をあらわす。置き字となることもあり、その場合は訓読しない。
書き下し助字の「也」はこの意味でよむ場合、ひらがなで書き下すこととなっている。
現代語訳断定の意味がわかるように書き下す。書き言葉の日本語では「~である。」「~だ。」などに相当する。
文法Aには多く体言が入る。文が入ることもあり、その場合には基本的に活用語の連体形、終止形が入る。後述の否定形と組み合わせて「~ざるなり。」「~に非ざるなり。」の形になることも多い。
A已
句法
A
已
書き下し
Aのみ
訳
Aなのである
置換・省略
白文
A
已而已而已矣也已已矣耳已焉耳矣
書き下し
Aのみ
文法
A
叙述文
論理式
例文
古之人
乎
於此
言
已
古の人や、此に於て言はんのみ〔荘子〕
古代の(優れた)人々も、まさにこのような場で(真理を)語ったのだ
「古」は
盡
心
焉耳矣
心を盡すのみ〔孟子〕
導出
「已」は助詞で、よく断定をあらわす。置き字となることもあり、その場合は訓読しない。「巳」とは異なる。
書き下し助字の「已」はこの意味でよむ場合、ひらがなで書き下すこととなっている。
現代語訳断定の意味がわかるように書き下す。書き言葉の日本語では「~なのである。」「~するのみだ。」などに相当する。後述の「限定」の趣旨が多分に含まれているが、この言明以外には言及することはないという強い意志があるので、断定の類になる。
文法Aには叙述文が入り、多く終止形である。
参考図書
- 『大漢和辭典』(服部宇之吉總纂 柴田三郎著 敬文館)