2-1-1. 集合と要素

Sets and Elements

集合

定義

あるものを含むか含まないかが客観的にいずれかひとつに定まるようなものの集まりを集合といい,例えば次のように表す。

AA

数体系

定義
自然数

自然数全体の集合は次のように表す。

N\mathbb{N}
整数

整数全体の集合は次のように表す。

Z\mathbb{Z}
有理数

有理数全体の集合は次のように表す。

Q\mathbb{Q}
実数

実数全体の集合は次のように表す。

R\mathbb{R}
複素数

複素数全体の集合は次のように表す。

C\mathbb{C}
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すべて:自然数,整数,有理数,実数,複素数
ℕ,ℤ,ℚ,ℝ,ℂ
説明

N\mathbb{N} は英語で「自然数」を意味する “natural numbers”(英語),Z\mathbb{Z} はドイツ語で「数」を意味する “Zahlen”(ドイツ語),P\mathbb{P} は英語で「素数」を意味する “prime numbers”(英語),Q\mathbb{Q} は英語で「商」を意味する “quotient”(英語),R\mathbb{R} は英語で「実数」を意味する “real numbers”(英語),C\mathbb{C} は英語で「複素数」を意味する “complex numbers”(英語)に由来する。


この 55 つの集合はどの分野においてもほとんど記号の重複がなく,文脈の中で改めて定義を述べる必要はない。ただし分野によって N\mathbb{N} に 00 を含みうるので明記が必要なことがある。


素数全体の集合を,文脈で定義を補いながら次のように表すこともできる。

P\mathbb{P}

要素・元

定義

集合 AA を構成するものをその集合 AA の要素または元という。xx が AA の要素であるとき xx は AA に属するといい,xx が AA の要素でないとき xx は AA に属さないという。

集合に属する

要素 xx が集合 AA に属するとき,次のように表す。

x∈Ax\in A

集合 AA が要素として要素 xx をもつとき,次のように表す。

A∋xA \ni x
集合に属さない

要素 xx が集合 AA に属さないとき,次のように表す。

x∉Ax\notin A

集合 AA が要素として要素 xx をもたないとき,次のように表す。

A∌xA \notni x
説明

要素 xx が集合 AA に属する場合に x∈Ax\in A と書いても A∋xA \ni x と書いても同義。特段の理由がない場合は前者を用いる。同様に要素 xx が集合 AA に属する場合に x∉Ax\notin A と書いても A∌xA \notni x と書いても同義であり,前者がよく用いられる。

有限集合

定義

有限個の要素からなる集合を有限集合といい,ある有限集合 AA のもつ要素の個数 NN は次のように表す。

N=n(A)N=n(A)
説明

有限集合のもつ要素の個数のことを「濃度」ともいう。

無限集合

定義

有限集合でない集合を無限集合という。

説明

無限集合は大小を比較することができ,その大きさを「濃度」で表す。

空くう集合

定義

要素を一つも持たない集合を空集合といい,次のように表す。

∅\varnothing
説明

他にも ∅\emptyset や ϕ\phi などで表されることもある。また {  }\{\;\} で表されることもある。

全体集合

定義

議論の対象にしているすべての要素を含んだ集合であって,空でない集合を全体集合といい,次のように表す。

UU
説明

全体集合は,数の体系を表す N\mathbb{N} や C\mathbb{C} を用いることが多い。

文脈によってはさらに範囲を狭めることもあり,例えばサイコロの目だけを考えるときは

U={1,2,3,4,5,6}U = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}

コイントスを考えるときは

U={表,裏}U = \{\text{表}, \text{裏}\}

じゃんけんの手のときは

U={グー,チョキ,パー}U = \{\text{グー}, \text{チョキ}, \text{パー}\}

などがある。

外延的記法

定義
有限集合

ある有限集合 AA が要素 x1,x2,x3,...,xnx_1, x_2, x_3, ..., x_n を持つとき,次のように表す。

A={x1,x2,x3,…,xn}A = \{x_1, x_2, x_3, \dots , x_n\}

ただし要素 x1,x2,x3,…,xnx_1, x_2, x_3, \dots , x_n は互いに相異なる。

無限集合

ある無限集合 AA が要素 x1,x2,x3,...x_1, x_2, x_3, ... を持つとき,次のように表す。

A={x1,x2,x3,… }A = \{x_1, x_2, x_3, \dots\}

ただし要素 x1,x2,x3,…x_1, x_2, x_3, \dots は互いに相異なる。

説明

要素の数が少なければ,すべてを羅列するのが親切である。

A={1,2,3,4,5}A= \{1, 2, 3, 4, 5\}

集合の表現は,要素を羅列する順序によらない。大小が比較できる場合,一般に小さいほうから並べる。

A={1,2,3,4,5}={5,4,3,2,1}\begin{aligned} A&= \{1, 2, 3, 4, 5\}\\ &= \{5, 4, 3, 2, 1\} \end{aligned}

一般的に省略のある外延的記法は誤解を生みやすいことに留意する。次のような表記は,33 以上の奇数の集合か 33 以上の素数の集合か一意に定めることができず,不適切である。

A={3,5,7,… }A = \left\{ 3, 5, 7, \dots \right\}

内包的記法

定義

ある集合 AA が条件 P(x)P(x) を満たすすべての要素 xx の集合であり,かつすべての要素 xx が全体集合 UU に属するとき,次のように表す。

A={x∈U∣P(x)}A = \{x \in U \mid P(x) \}
説明

厳密に言えば全体集合 UU を指定しないで {x∣P(x)}\{ x \mid P(x) \} などと書くことはできないが,条件の PP の中に実質的に全体集合を含む場合,あるいは文脈上要素 xx の属する範囲が明らかであればこの限りではない。


要素は様々な表され方があり,例えば次のようなものがある。要素は項で定義し,真偽を判定できる論理式を指定することできない。要素の表され方により,右側の条件はこれを過不足なく,かつ数学的に誤りの無いように指定する。

A={x∣x∈R}A={2n∣n∈N}A={a+2bi∣a,b∈R}A={f(x)∣x∈X}A={(x,y)∈R2∣x2+y2<1}A={ax+by∣a,b∈R}A={(an)n∈N∣an+2=an+1+an}\begin{aligned} A &= \{x \mid x \in \mathbb{R}\}\\ A &= \{2n \mid n \in \mathbb{N}\}\\ A &= \{a + 2bi \mid a, b \in \mathbb{R}\}\\ A &= \{f(x) \mid x \in X\}\\ A &= \{ (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 < 1 \}\\ A &= \{a\boldsymbol{x} + b\boldsymbol{y} \mid a, b\in \mathbb{R}\}\\ A &= \{(a_{n})_{n \in \mathbb{N}}\mid a_{n+2}=a_{n+1}+a_{n}\} \end{aligned}

要素 xx の満たす条件は不等式や方程式,言葉などで表す。

A={x∣1≦x≦10}A={x∣x2−5x+6}A={x∣x  は奇数}\begin{aligned} A &= \{ x \mid 1 \leqq x \leqq 10 \}\\ A &= \{ x \mid x^2 - 5x + 6 \}\\ A &= \{ x \mid x \;\text{は奇数} \} \end{aligned}

同じ集合を表すのにも様々な表記がありうる。

A={x∣x  は自然数}={x∣x∈N}\begin{aligned} A &= \{ x \mid x \;\text{は自然数} \}\\ &= \{ x \mid x \in \mathbb{N} \} \end{aligned}

条件が複数あるときは次のように表す。

A={x∈Z∣x<2,5<x}A = \{ x \in \mathbb{Z} \mid x < 2, 5 < x \}

表記の仕方によっては定義されないものが存在する。例えば,虚数はその大小を比較することができないので,次のような表記をすることはできない。

A={x∈C∣1<x<2}A={x∣x2+x+1<0}\begin{aligned} A &= \{ x \in \mathbb{C} \mid 1 < x < 2 \}\\ A &= \{ x \mid x^2+x+1 < 0 \} \end{aligned}

また,過不足のある表記,誤解を生むような表記,不親切な表記,慣例に著しく反する表記は推奨されない。例えば,x∈Cx \in \mathbb{C} の表記が不必要となる次のような表記は過剰である。

A={x∈C∣x∈R}A = \{ x \in \mathbb{C} \mid x \in \mathbb{R} \}

x=0x=0 で定義されない次のような条件において x≠0x \neq 0 といった条件を明示しない次のような表記は不足である。

A={x∈Z    ∣  −1<1x<1}A = \left\{ x \in \mathbb{Z} \;\; \bigg\vert \; -1 < \dfrac{1}{x} < 1 \right\}

要素が数個しかないことが明らかであり,特に前後の文脈で説明が足りるようなときは,外延的記法による場合が良いことがある。例えば,サイコロの奇数の目を表すときに次のような内包的記法をすると親切ではない。

A={x∈N∣1≦x≦6,  x≡1(mod2)}={1,3,5}\begin{aligned} A &= \{ x \in \mathbb{N} \mid 1 \leqq x \leqq 6, \; x \equiv 1 \pmod 2 \}\\ &= \{ 1,3,5 \} \end{aligned}

無限集合であって外延的記法を使用しない場合も,文脈で補うか,言葉で表すなどできる限り簡潔にすることが求められる。ただし厳密な定義が必要な場合は,次の例の 11 行目のような表記を使うことが求められる場合もある。

A={x∈N∣(x>1)∧(∀d∈N, d∣x  ⟹  (d=1∨d=x))∧¬(2∣x)}={p∈N∣p は奇数の素数 }={p∈N∣p is an odd prime }={p∈P∣p≠2}\begin{aligned} A &= \{ x \in \mathbb{N} \mid (x > 1) \land (\forall d \in \mathbb{N}, \, d \mid x \implies (d = 1 \lor d = x)) \land \neg(2 \mid x) \}\\ &= \{ p \in \mathbb{N} \mid p \text{ は奇数の素数 } \}\\ &= \{ p \in \mathbb{N} \mid p \text{ is an odd prime } \}\\ &= \{ p \in \mathbb{P} \mid p \neq 2\} \end{aligned}

代表要素に別の意味で広く一般に知られた記号を用いることは好まれない。次のように,虚数単位として知られる ii を複素数の集合に属する要素の代表として使用する例は極めて不自然である。

A={i∣i∈C}\begin{aligned} A &= \{ i \mid i \in \mathbb{C} \} \end{aligned}

対称であるべきものを不必要に非対称に扱っている次の例は,極めて不自然である。∣\mid よりも左側におくことのできる全体集合は,基本的に右側の集合をおおむね包摂するより大きな集合に限られる。

X={x∈A∣x∈B,x∈C}A={2n,n∈N}B={3n,n∈N}C={5n,n∈N}\begin{aligned} X &= \{ x \in A \mid x \in B, x \in C \}\\ A &= \{2n, n \in \mathbb{N}\}\\ B &= \{3n, n \in \mathbb{N}\}\\ C &= \{5n, n \in \mathbb{N}\} \end{aligned}

属するすべての要素の大きさを比較することができる集合 AA の 00 以上の要素の集合は,慣例として次のように表すこともできる。ただし用いることができるかどうかは分野や流派などによる。

A≥0A_{\ge 0}

正の要素に限定する場合,次のように表すこともできる。これが許容されるかはさらに強く分野や流派に依存する。

A+A_{+}

負の場合は次のように表すこともある。

A−A_{-}

これらには A+A^{+} や A−A^{-} という記法もある。また,古い文献では 00 を除く集合に Z∗\mathbb{Z}^{*} や R∗\mathbb{R}^{*} などと表すこともあるが,数学の発展に従い別の意味に誤認しやすくなり,数の集合に対して用いられることが少なくなってきた。

いずれにしても,属するすべての要素の大きさを比較することができない場合には文脈で補うか,この記法を用いない方が親切である。