拷問及び残虐な刑罰の禁止

Prohibition of torture and cruel punishments

絞首刑による死刑

死刑合憲判決

判例

死刑そのものをもっていわゆる残虐な刑罰に該当するということはできない。

最大判 昭和23年3月12日

要旨
裁判所:最高裁判所大法廷
判例:1948年(昭和23年)3月12日
事件番号:昭和22(れ)119
出典:刑集 第2巻3号191頁
 生命は尊貴である。一人の生命は,全地球よりも重い。死刑は,まさにあらゆる刑罰のうちで最も冷厳な刑罰であり,またまことにやむを得ざるに出ずる窮極の刑罰である。それは言うまでもなく,尊厳な人間存在の根元である生命そのものを永遠に奪い去るものだからである。現代国家は一般に,統治権の作用として刑罰権を行使するにあたり,刑罰の種類として死刑を認めるかどうか,いかなる罪質に対して死刑を科するか,またいかなる方法手続をもつて死刑を執行するかを法定している。そして,刑事裁判においては,具体的事件に対して被告人に死刑を科するか他の刑罰を科するかを審判する。かくてなされた死刑の判決は法定の方法手続に従つて現実に執行せられることとなる。これら一連の関係において,死刑制度は常に,国家刑事政策の面と人道上の面との双方から深き批判と考慮が払われている。されば,各国の刑罰史を顧みれば,死刑の制度及びその運用は,総ての他のものと同様に,常に時代と環境とに応じて変遷があり,流転があり,進化がとげられてきたということが窺い知られる。わが国の最近において,治安維持法,国防保安法,陸軍刑法,海軍刑法,軍機保護法及び戦時犯罪処罰特例法等の廃止による各死刑制の消滅のごときは,その顕著な例証を示すものである。そこで新憲法は一般的概括的に死刑そのものの存否についていかなる態度をとつているのであるか。弁護人の主張するように,果して刑法死刑の規定は,憲法違反として効力を有しないものであろうか。まず,憲法第13条においては,すべて国民は個人として尊重せられ,生命に対する国民の権利については,立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする旨を規定している。しかし,同時に同条においては,公共の福祉に反しない限りという厳格な枠をはめているから,もし公共の福祉という基本的原則に反する場合には,生命に対する国民の権利といえども立法上制限乃至ないし剥奪されることを当然予想しているものといわねばならぬ。そしてさらに,憲法第41条によれば,国民個人の生命の尊貴といえども,法律の定める適理の手続によつて,これを奪う刑罰を科せられることが,あきらかに定められている。すなわち憲法は,現代多数の文化国家におけると同様に,刑罰として死刑の存置を想定し,これを是認したものと解すべきである。言葉をかえれば,死刑の威嚇力によつて一般予防をなし,死刑の執行によつて特殊な社会悪の根元を絶ち,これをもつて社会を防衛せんとしたものであり,また個体に対する人道観の上に全体に対する人道観を優位せしめ,結局社会公共の福祉のために死刑制度の存続の必要性を承認したものと解せられるのである。弁護人は,憲法第406条が残虐な刑罰を絶対に禁ずる旨を定めているのを根拠として,刑法死刑の規定は憲法違反だと主張するのである。しかし死刑は,冒頭にも述べたようにまさに窮極の刑罰であり,また冷厳な刑罰ではあるが,刑罰としての死刑そのものが,一般に直ちに同条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。ただ死刑といえども,他の刑罰の場合におけると同様に,その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には,勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから,将来若し死刑について火あぶり,はりつけ,さらし首,釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば,その法律こそは,まさに憲法第406条に違反するものというべきである。前述のごとくであるから,死刑そのものをもつて残虐な刑罰と解し,刑法死刑の規定を憲法違反とする弁護人の論旨は,理由なきものといわねばならぬ。

最大判 昭和36年7月19日

要旨
裁判所:最高裁判所大法廷
判例:1961年(昭和36年)7月19日
事件番号:昭和32(あ)2247
出典:刑集 第15巻7号1106頁
議論
アメリカにおける判例

Furman v. Georgia 事件に対する判決は,判事全員が各々個別に意見したから,法廷意見が違憲に至るまでの理由が詳らかでない。

Furman v. Georgia

要旨
裁判所:Supreme Court of the United States
判例:1972年6月29日
事件番号:69-5003
出典:408 U.S. 238

PER CURIAM.

Petitioner in No. 69-5003 was convicted of murder in Georgia and was sentenced to death pursuant to Ga. Code Ann. §26-1005 (Supp. 1971) (effective prior to July 1, 1969). 225 Ga. 253, 167 S. E. 2d 628 (1969). Petitioner in No. 69-5030 was convicted of rape in Georgia and was sentenced to death pursuant to Ga. Code Ann. § 26-1302 (Supp. 1971) (effective prior to July 1, 1969). 225 Ga. 790, 171 S. E. 2d 501 (1969). Petitioner in No. 69-5031 was convicted of rape in Texas and was sentenced to death pursuant to Tex. Penal Code, Art. 1189 (1961). 447 S. W. 2d 932 (Ct. Crim. App. 1969). Certiorari was granted limited to the following question: “Does the imposition and carrying out of the death penalty in [these cases] constitute cruel and unusual punishment in violation of the Eighth and Fourteenth Amendments?” 403 U. S. 952 (1971). The Court holds that the imposition and carrying out of the death penalty in these cases constitute cruel and unusual punishment in violation of the Eighth and Fourteenth Amendments. The judgment in each case is therefore reversed insofar as it leaves undisturbed the death sentence imposed, and the cases are remanded for further proceedings.

So ordered.

Me. Justice Douglas, Mr. Justice Brennan, Mr. Justice Stewart, Mr. Justice White, and Mr. Justice Marshall have filed separate opinions in support of the judgments. The Chief Justice, Mr. Justice Black-mun, Mr. Justice Powell, and Mr. Justice Rehnquist have filed separate dissenting opinions.

当サイトによる翻訳
法廷意見。 事件番号69-5003の申立人は、ジョージア州において殺人罪で有罪判決を受け、同州法(Ga. Code Ann. §26-1005 (Supp. 1971)、1969年7月1日より前に施行)に基づき死刑を宣告された。225 Ga. 253, 167 S. E. 2d 628 (1969)。事件番号69-5030の申立人は、ジョージア州において強姦罪で有罪判決を受け、同州法(Ga. Code Ann. § 26-1302 (Supp. 1971)、1969年7月1日より前に施行)に基づき死刑を宣告された。225 Ga. 790, 171 S. E. 2d 501 (1969)。事件番号69-5031の申立人は、テキサス州において強姦罪で有罪判決を受け、同州刑法(Tex. Penal Code, Art. 1189 (1961))に基づき死刑を宣告された。447 S. W. 2d 932 (Ct. Crim. App. 1969)。 移送令(サーシオレイライ)は、次の問いに限定して認められた。すなわち、「[これらの事件において]死刑を科し、執行することは、合衆国憲法修正第8条および第14条に違反する残虐で異常な刑罰にあたるか」。403 U. S. 952 (1971)。 当法廷は、これらの事件において死刑を科し、執行することは、合衆国憲法修正第8条および第14条に違反する残虐で異常な刑罰にあたると判断する。したがって、科された死刑判決を維持した点において、各事件の原判決を破棄し、さらなる手続きのために各事件を差し戻す。 よって、命ずる。 ダグラス判事、ブレナン判事、スチュアート判事、ホワイト判事、およびマーシャル判事は、本判決を支持する個別の意見書を提出した。長官、ブラックマン判事、パウエル判事、およびレンキスト判事は、個別の反対意見書を提出した。