1-5-1. 等速円運動

Uniform Circular Motion

等速円運動の基本量

定義

角速度

時間 Δt\Delta t あたりに回転した角度が Δθ\Delta \theta であるような等速円運動をする物体の角速度 ω\omega は次のように表す。

ω=ΔθΔt\omega = \dfrac{\Delta \theta}{\Delta t}
導出

時間 Δt\Delta t の間に角度 Δθ\Delta \theta だけ回転したとき,1単位時間あたりに回転する角度,すなわち角速度 ω\omega を求める。このとき,次の比の式が成り立つ。

Δt:Δθ=1:ω\Delta t : \Delta \theta = 1 : \omega

この式を ω\omega について解くことで,定義通りの式が導かれる。

公式

瞬間の角速度

円運動する物体の時刻 tt における角度を θ(t)\theta(t) とすると,そのときの瞬間の角速度 ω\omega は次のように求める。

ω=dθdt\omega = \dfrac{d\theta}{dt}
導出

微小な時間 Δt\Delta t の間に角度が Δθ\Delta \theta だけ変化したときの平均の角速度は ΔθΔt\dfrac{\Delta \theta}{\Delta t} で求められる。時刻 tt における瞬間の角速度は,この時間間隔 Δt\Delta t を限りなく 00 に近づける極限をとることで得られる。これは数学における導関数の定義そのものである。

ω=limΔt0ΔθΔt=dθdt\omega = \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{\Delta \theta}{\Delta t} = \dfrac{d\theta}{dt}
公式

周期と回転数

角速度 ω\omega で等速円運動する物体の周期(1回転にかかる時間) TT と,回転数(1秒あたりの回転回数) nn は次のように求める。

周期T=2πωT = \dfrac{2\pi}{\omega}回転数n=ω2πn = \dfrac{\omega}{2\pi}
導出
周期の導出

1回転の角度は 2π2\pi ラジアンである。この角度を角速度 ω\omega で回転するのにかかる時間が周期 TT であるから,角速度の定義式より ω=2πT\omega = \dfrac{2\pi}{T} が成り立つ。これを TT について解くと,T=2πωT = \dfrac{2\pi}{\omega} が導かれる。

回転数の導出

回転数 nn は周期 TT の逆数として定義される。周期は「1回転あたりにかかる秒数」であるのに対し,回転数は「1秒あたりに何回転するか」を表すためである。したがって,

n=1T=ω2πn = \dfrac{1}{T} = \dfrac{\omega}{2\pi}

が導出される。

等速円運動のベクトル解析

公式

等速円運動の速度

原点を中心として半径 rr の円周上を,一定の角速度 ω\omega で運動する物体がある。時刻 tt における物体の位置を r\boldsymbol{r} とし,その角度を θ=ωt\theta = \omega t とする。

速度ベクトルv=rω(sin(ωt)cos(ωt))\boldsymbol{v} = r\omega \begin{pmatrix} -\sin(\omega t) \\ \cos(\omega t) \end{pmatrix}速さv=v=rωv = |\boldsymbol{v}| = r\omega
導出

時刻 tt における物体の位置ベクトル r\boldsymbol{r} は,デカルト座標系において次のように成分表示される。

r=(xy)=(rcos(ωt)rsin(ωt))\boldsymbol{r} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} r\cos(\omega t) \\ r\sin(\omega t) \end{pmatrix}

速度ベクトル v\boldsymbol{v} は位置ベクトル r\boldsymbol{r} を時間 tt で微分することで求められる。

v=drdt=ddt(rcos(ωt)rsin(ωt))=(rωsin(ωt)rωcos(ωt))=rω(sin(ωt)cos(ωt))\boldsymbol{v} = \dfrac{d\boldsymbol{r}}{dt} = \dfrac{d}{dt} \begin{pmatrix} r\cos(\omega t) \\ r\sin(\omega t) \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} -r\omega\sin(\omega t) \\ r\omega\cos(\omega t) \end{pmatrix} = r\omega \begin{pmatrix} -\sin(\omega t) \\ \cos(\omega t) \end{pmatrix}

速度の大きさ(速さ)は,このベクトルの大きさ(ノルム)を計算することで求められる。

v=v=(rωsin(ωt))2+(rωcos(ωt))2=r2ω2(sin2(ωt)+cos2(ωt))v = |\boldsymbol{v}| = \sqrt{(-r\omega\sin(\omega t))^2 + (r\omega\cos(\omega t))^2} = \sqrt{r^2\omega^2(\sin^2(\omega t) + \cos^2(\omega t))}

三角関数の相互関係 sin2+cos2=1\sin^2 + \cos^2 = 1 を用いると,v=rωv = r\omega が導出される。

説明

位置ベクトル r\boldsymbol{r} と速度ベクトル v\boldsymbol{v} の内積を計算すると,

rv=(rcos(ωt))(rωsin(ωt))+(rsin(ωt))(rωcos(ωt))=0\boldsymbol{r} \cdot \boldsymbol{v} = (r\cos(\omega t))(-r\omega\sin(\omega t)) + (r\sin(\omega t))(r\omega\cos(\omega t)) = 0

となり,常にゼロになることがわかる。これは,2つのベクトルが常に直交していることを意味し,「円運動の速度は常に半径方向と垂直な接線方向を向く」という物理的な事実を数学的に証明している。

公式

等速円運動の加速度(向心加速度)

原点を中心として半径 rr の円周上を,一定の角速度 ω\omega で運動する物体がある。時刻 tt における物体の加速度ベクトル a\boldsymbol{a} は,次のように求める。

加速度ベクトルa=rω2(cos(ωt)sin(ωt))=ω2r\boldsymbol{a} = -r\omega^2 \begin{pmatrix} \cos(\omega t) \\ \sin(\omega t) \end{pmatrix} = -\omega^2 \boldsymbol{r}加速度の大きさa=a=rω2=v2ra = |\boldsymbol{a}| = r\omega^2 = \dfrac{v^2}{r}
導出

導出1:ベクトル微分による方法 加速度 a\boldsymbol{a} は速度ベクトル v\boldsymbol{v} を時間 tt で微分することで求められる。

a=dvdt=ddt(rω(sin(ωt)cos(ωt)))=rω(ωcos(ωt)ωsin(ωt))\boldsymbol{a} = \dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt} = \dfrac{d}{dt} \left( r\omega \begin{pmatrix} -\sin(\omega t) \\ \cos(\omega t) \end{pmatrix} \right) = r\omega \begin{pmatrix} -\omega\cos(\omega t) \\ -\omega\sin(\omega t) \end{pmatrix}a=rω2(cos(ωt)sin(ωt))\boldsymbol{a} = -r\omega^2 \begin{pmatrix} \cos(\omega t) \\ \sin(\omega t) \end{pmatrix}

ここで,ベクトル部分は位置ベクトル r\boldsymbol{r} と一致するため,a=ω2r\boldsymbol{a} = -\omega^2 \boldsymbol{r} と書き換えることができる。この式は,加速度の向きが常に位置ベクトルと逆向き,すなわち円の中心を向いていることを示している。 加速度の大きさ aa はベクトルのノルムを計算することで求まる。

a=a=rω2(cos(ωt))2+(sin(ωt))2=rω2a = |\boldsymbol{a}| = r\omega^2 \sqrt{(-\cos(\omega t))^2 + (-\sin(\omega t))^2} = r\omega^2

また,v=rωv=r\omega の関係を用いると,ω=vr\omega = \dfrac{v}{r} であるから,

a=r(vr)2=v2ra = r \left( \dfrac{v}{r} \right)^2 = \dfrac{v^2}{r}

という,速さを用いた表現も導出される。

導出2:幾何学的極限による方法 微小な時間 Δt\Delta t の間に,物体の速度ベクトルが v1\boldsymbol{v}_1 から v2\boldsymbol{v}_2 へと変化したと考える。速さが一定であるため,ベクトルの大きさは v1=v2=v|\boldsymbol{v}_1| = |\boldsymbol{v}_2| = v である。 この間に回転した角度は Δθ=ωΔt\Delta \theta = \omega \Delta t である。 加速度の定義は a=limΔt0v2v1Δt\boldsymbol{a} = \lim_{\Delta t \to 0} \dfrac{\boldsymbol{v}_2 - \boldsymbol{v}_1}{\Delta t} である。ベクトル v1,v2\boldsymbol{v}_1, \boldsymbol{v}_2 とその差 Δv=v2v1\Delta \boldsymbol{v} = \boldsymbol{v}_2 - \boldsymbol{v}_1 によって作られる二等辺三角形を考える。 Δθ\Delta \theta が非常に小さいとき,底辺の長さ Δv|\Delta \boldsymbol{v}| は円弧の長さとして近似できる。

ΔvvΔθ|\Delta \boldsymbol{v}| \simeq v \Delta \theta

したがって,加速度の大きさ aa は次のように近似できる。

a=aΔvΔt=vΔθΔta = |\boldsymbol{a}| \simeq \dfrac{|\Delta \boldsymbol{v}|}{\Delta t} = \dfrac{v \Delta \theta}{\Delta t}

ここで Δt0\Delta t \to 0 の極限をとると,平均の角速度 ΔθΔt\dfrac{\Delta \theta}{\Delta t} は瞬間の角速度 ω\omega に一致する。

a=vωa = v \omega

さらに v=rωv=r\omega を代入すると,a=(rω)ω=rω2a = (r\omega)\omega = r\omega^2 が導出される。また,ベクトル Δv\Delta \boldsymbol{v} の向きは,Δt0\Delta t \to 0 の極限で,常に速度ベクトルに垂直な方向,すなわち円の中心方向を向くことがわかる。

等速円運動と力の関係

公式

向心力

質量 mm の物体が半径 rr の円周上を速さ vv(または角速度 ω\omega)で等速円運動を続けるためには,運動の中心に向かって常に一定の大きさの力(向心力)FF がはたらき続ける必要がある。その大きさは次のように求める。

F=mv2r=mrω2F = m\dfrac{v^2}{r} = mr\omega^2
導出

等速円運動をしている物体の加速度は,常に中心向きで大きさが a=v2ra = \dfrac{v^2}{r} である。 ニュートンの運動方程式 F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} にこの加速度を代入することで,必要な力のベクトルが定まる。 加速度の向きが中心を向いているため,力の向きも常に中心を向いている。その大きさは,

F=ma=mv2rF = ma = m \dfrac{v^2}{r}

と導かれる。v=rωv=r\omega の関係を用いることで,F=m(rω)2r=mrω2F = m \dfrac{(r\omega)^2}{r} = mr\omega^2 も同様に導出される。 この向心力は,糸の張力であったり,惑星間の万有引力であったり,あるいはばねの弾性力など,様々な具体的な力がその役割を担うことになる。

公式

ばねでつながれた物体の等速円運動

一端を点Oで固定された自然長が ll,ばね定数 kk のばねにつながれた質量 mm の物体が,なめらかな水平面上で角速度 ω\omega の等速円運動を続けるとき,ばねの自然長からの伸び dd は次のように求める。

d=mlω2kmω2d = \dfrac{ml\omega^2}{k - m\omega^2}
導出

物体は半径 r=l+dr = l+d の円周上を角速度 ω\omega で運動している。この円運動を維持するためには,中心に向かって F=mrω2=m(l+d)ω2F = mr\omega^2 = m(l+d)\omega^2 の大きさの向心力が必要である。

この向心力の役割を担っているのは,ばねの弾性力である。ばねの伸びが dd であるとき,フックの法則により弾性力の大きさは kdkd となる。 したがって,物体の運動方程式(向心力についてのつり合いの式)は次のようになる。

m(l+d)ω2=kdm(l+d)\omega^2 = kd

この方程式を,未知数である伸び dd について解く。

mlω2+mdω2=kdmlω2=kdmdω2mlω2=(kmω2)d\begin{aligned} ml\omega^2 + md\omega^2 &= kd \\ ml\omega^2 &= kd - md\omega^2 \\ ml\omega^2 &= (k - m\omega^2)d \end{aligned}

これを dd について整理すると,求める式が導出される。

d=mlω2kmω2d = \dfrac{ml\omega^2}{k - m\omega^2}

この式は,分母がゼロとならないように k>mω2k > m\omega^2 の条件下で物理的に意味を持つ。角速度が大きすぎると,弾性力だけでは向心力を賄いきれず,円運動を維持できなくなることを示唆している。

公式

鉛直面内の円運動の条件

一端を点Oで固定された長さ ll の軽い糸につながれた質量 mm の物体が,鉛直面内で円運動を続けるために,最下点で物体に与えるべき初速の大きさ v0v_0 は次の条件を満たす必要がある。 ただし重力加速度を gg とする。

v05glv_0 \ge \sqrt{5gl}
導出

物体に対して運動方程式を立てる。時刻 tt における物体の速度を v\boldsymbol{v},最下点から測った角度を θ\theta,糸の張力を T\boldsymbol{T} とする。

力学的エネルギー保存則の適用

まず,運動の過程で力学的エネルギーが保存されることを利用して,任意の角度 θ\theta における速さ vv を求める。最下点( θ=0\theta = 0 )を位置エネルギーの基準 y=0y=0 とする。最下点と角度 θ\theta の点(高さ y=l(1cosθ)y = l(1-\cos\theta) )でエネルギー保存則を立てると,

12mv02+0=12mv2+mg(l(1cosθ))\dfrac{1}{2}m{v_0}^2 + 0 = \dfrac{1}{2}mv^2 + mg(l(1-\cos\theta))

この式を v2v^2 について解くと,

v2=v022gl(1cosθ)v^2 = {v_0}^2 - 2gl(1 - \cos\theta)

となる。

向心方向の運動方程式

次に,任意の角度 θ\theta における向心方向(糸の方向)の運動方程式を立てる。向心力として,糸の張力 TT と,重力の半径方向成分 mgcosθmg\cos\theta がはたらく。

mv2l=Tmgcosθm\dfrac{v^2}{l} = T - mg\cos\theta

この式を張力 TT について解くと,T=mv2l+mgcosθT = m\dfrac{v^2}{l} + mg\cos\theta となる。

円運動を続けるための条件

物体が弛むことなく円運動を一周するためには,軌道のどの点においても糸の張力がゼロ以上( T0T \ge 0 )でなければならない。張力 TT の式に先ほど求めた v2v^2 の式を代入する。

T=ml(v022gl(1cosθ))+mgcosθ=mv02l2mg(1cosθ)+mgcosθT = \dfrac{m}{l}\left( {v_0}^2 - 2gl(1 - \cos\theta) \right) + mg\cos\theta = \dfrac{m{v_0}^2}{l} - 2mg(1 - \cos\theta) + mg\cos\thetaT=mv02l+mg(3cosθ2)T = \dfrac{m{v_0}^2}{l} + mg(3\cos\theta - 2)

この TT がすべての θ\theta0θ2π0 \le \theta \le 2\pi )において T0T \ge 0 を満たす必要がある。張力 TT が最小になるのは,cosθ\cos\theta が最小値 1-1 をとる,すなわち軌道の最上点( θ=π\theta = \pi )である。 したがって,最上点での張力がゼロ以上であれば,他のどの点でも張力は正となる。最上点での条件は,

Ttop=mv02l+mg(3(1)2)=mv02l5mg0T_{\text{top}} = \dfrac{m{v_0}^2}{l} + mg(3(-1) - 2) = \dfrac{m{v_0}^2}{l} - 5mg \ge 0

この不等式を v0v_0 について解くと,

v025gl    v05gl{v_0}^2 \ge 5gl \implies v_0 \ge \sqrt{5gl}

となり,物体が鉛直面内で一周するための最低限の初速の条件が導出される。

公式

球の内側・外側をすべる小球

球の内側を円運動する条件

固定された半径 rr のなめらかな球の内側を,最下点で初速 v0v_0 を与えられた質量 mm の小球が円運動し続けるためには,ひもの場合と同様の条件が成り立つ。

v05grv_0 \ge \sqrt{5gr}球の外側をすべり落ちて離れる条件

固定された半径 rr のなめらかな球の最頂部に,質量 mm の小球を置き静かにすべらせたとき,小球が球の表面から離れる位置は,最頂部から測った角度 θ\theta が次の式を満たす点である。

cosθ=23\cos\theta = \dfrac{2}{3}
導出

球の内側を運動する場合,垂直抗力 NN がひもの張力 TT と全く同じ役割を果たすため,導出は省略する。 球の外側をすべる場合について考える。最頂部を位置エネルギーの基準 y=ry=r とし,鉛直下向きを正として角度 ϕ\phi をとる。

エネルギー保存則と向心方向の運動方程式

最頂部( ϕ=0\phi = 0 )と任意の角度 ϕ\phi の点(高さ rcosϕr\cos\phi )で力学的エネルギー保存則を立てる。

mgr=12mv2+mgrcosϕ    v2=2gr(1cosϕ)mgr = \dfrac{1}{2}mv^2 + mgr\cos\phi \implies v^2 = 2gr(1 - \cos\phi)

向心方向の運動方程式を立てる。垂直抗力を NN とすると,向心力は重力の半径成分と垂直抗力の差となる。

mv2r=mgcosϕNm\dfrac{v^2}{r} = mg\cos\phi - N球から離れる条件

小球が球の表面から離れる瞬間は,垂直抗力 NN がゼロになる瞬間である。N=0N=0 を運動方程式に代入すると,mv2r=mgcosϕm\dfrac{v^2}{r} = mg\cos\phi となり,v2=grcosϕv^2 = gr\cos\phi が得られる。 この式とエネルギー保存則から得られた v2v^2 の式を等しいとおく。

2gr(1cosϕ)=grcosϕ2gr(1 - \cos\phi) = gr\cos\phi

両辺を grgr で割り,cosϕ\cos\phi について解く。

22cosϕ=cosϕ    3cosϕ=2    cosϕ=232 - 2\cos\phi = \cos\phi \implies 3\cos\phi = 2 \implies \cos\phi = \dfrac{2}{3}

となり,小球が表面から離れる角度が質量や半径によらない一定の値として求められる。