1-1-3. 落体の運動

Free-Fall Motion

運動方程式

定義

運動方程式

一定質量 mm の物体に加えている力 F\boldsymbol{F} とそのときの加速度ベクトル a\boldsymbol{a} の関係は、物体の速度が光速に比べて十分に遅い限りにおいて、次のように表す。

F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a}
説明

アイザック・ニュートンは著書『Philosophiæ Naturalis Principia Mathematica』(1687年7月5日)通称『プリンキピア』において、力とは「単位時間あたりの運動量の変化」であると定義した。 質量 mm の物体が速度 v\boldsymbol{v} で運動しているとき、その運動の勢いを表す量として「運動量」 p\boldsymbol{p} を次のように定義する。

p=mv\boldsymbol{p} = m\boldsymbol{v}

時間 Δt0\Delta t \to 0 における運動量の時間変化率、すなわち微分の記号を用いると、ニュートンが提唱した本来の運動方程式は次のように表される。

F=dpdt\boldsymbol{F} = \dfrac{d\boldsymbol{p}}{dt}

この式に p=mv\boldsymbol{p} = m\boldsymbol{v} を代入して、F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} を導くことを考える。

F=d(mv)dt\boldsymbol{F} = \dfrac{d(m\boldsymbol{v})}{dt}

ここで、日常的な力学現象では物体の質量 mm は時間によって変化しない(定数である)とみなせる。微分の性質により、定数 mm は微分の外に出すことができるから、

F=mdvdt\boldsymbol{F} = m\dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt}

なお無視できないほど質量 mm が時間によって変化する場合、すなわち物体の速度が光速に近づく場合、この仮定は成り立たないから、運動方程式を用いることはできない。このことは後に原子物理の分野で詳しく述べる。 速度 v\boldsymbol{v} の時間微分 dvdt\dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt} は、「単位時間あたりの速度の変化」、すなわち加速度 a\boldsymbol{a} に他ならない。

a=dvdt\boldsymbol{a} = \dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt}

したがって、これらを結びつけることで、質量が一定という条件のもとで定義通りの式が導かれる。

F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a}

ここで注意すべきは、この運動方程式は純粋な数学的論理のみから証明された定理ではなく、無数の実験や観察によって裏付けられた自然界の「経験則」であるという点である。 さらに、この式は単に既知の数値を当てはめて答えを算出するための計算式ではない。物体に力 F\boldsymbol{F} が働くこと(原因)によって、動かしにくさの指標である質量 mm を介し、加速度 a\boldsymbol{a} という運動状態の変化(結果)が生じるという、自然界の因果関係を表す「関係式」として捉えることが極めて重要である。

ここに運動量 p\boldsymbol{p} よりも先に運動方程式を掲載するのは、身の回りでは質量が一定の現象が大半であり、目に見える「加速度」を用いた方が直感的に上記の因果関係(運動の法則)を理解しやすいためである。

しかし、物理学をより広い視点で捉えたとき、F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} のままでは説明できない現象が存在する。 例えば、量子力学で扱う光の粒子(光子)は質量が m=0m=0 であるため、この式に従えばいかなる力や運動の勢いも生み出さないことになる。 しかし実際には、光子は波長を λ\lambda、プランク定数を hh として、次の運動量 pp を持つことが知られている。

p=hλp = \dfrac{h}{\lambda}

質量がゼロであっても運動量を持つため、本来の定義である F=dpdt\boldsymbol{F} = \dfrac{d\boldsymbol{p}}{dt} に立ち返ることで、光が物体を押す力(光圧)などを矛盾なく計算することができる。 このように、F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} は質量が一定であるという条件下での実用的かつ直感的な基本式であり、ロケットのような質量の変化や光子のようなミクロの現象といったより普遍的な自然界の法則を記述するためには、後に運動量を主役とした定式化へ拡張していく必要がある。

落体の運動

公式

自由落下

物体を自由落下を始めた点を原点とし、鉛直下向きに yy 軸をとる。ただし重力加速度を gg とし、空気抵抗はないものとする。

速度

時刻 tt における、物体の yy 軸方向の速度 vyv_y は次のように求める。

vy=gtv_y = gt位置

時刻 tt における、物体の位置 yy は次のように求める。

y=12gt2y = \dfrac{1}{2}gt^2
導出

質量 mm の物体に働く力は、鉛直下向きの重力のみである。 ここでは鉛直下向きを yy 軸の正の向きにとっているため、物体に働く力の yy 成分は Fy=mgF_y = mg と表される。 したがって、加速度を aya_y とすると、運動方程式 Fy=mayF_y = ma_y より

mg=maymg = m a_y

両辺を mm で割ることで、物体の加速度は時間によらず ay=ga_y = g(一定)であることがわかる。

速度

加速度 aya_y は速度 vyv_y の時間微分 dvydt\dfrac{dv_y}{dt} であるから、次の微分方程式が成り立つ。

dvydt=g\dfrac{dv_y}{dt} = g

これを時刻 tt について積分する。C1C_1 を積分定数として、

vy=gdt=gt+C1v_y = \int g \,dt = gt + C_1

初期条件として、「自由落下」とは初速 00 でそっと放す運動を指すため、t=0t=0 のとき vy=0v_y = 0 である。

0=g0+C1C1=00 = g \cdot 0 + C_1 \quad \therefore C_1 = 0

これより、時刻 tt における速度の式が導かれる。

vy=gtv_y = gt位置

速度 vyv_y は位置 yy の時間微分 dydt\dfrac{dy}{dt} であるから、上で求めた速度の式より、

dydt=gt\dfrac{dy}{dt} = gt

これをさらに時刻 tt について積分する。C2C_2 を積分定数として、

y=gtdt=12gt2+C2y = \int gt \,dt = \dfrac{1}{2}gt^2 + C_2

初期条件として、落下を開始した点を原点にとっているため、t=0t=0 のとき位置 y=0y = 0 である。

0=12g02+C2C2=00 = \dfrac{1}{2}g \cdot 0^2 + C_2 \quad \therefore C_2 = 0

これより、時刻 tt における位置の式が導かれる。

y=12gt2y = \dfrac{1}{2}gt^2
公式

鉛直投げ上げ

物体を初速 v0v_0 で鉛直上向きに投げ上げた点を原点として、鉛直上向きに yy 軸をとる。ただし重力加速度を gg とし、空気抵抗はないものとする。

速度

時刻 tt における、物体の yy 軸方向の速度 vyv_y は次のように求める。

vy=gt+v0v_y = -gt + v_0位置

時刻 tt における、物体の位置 yy は次のように求める。

y=12gt2+v0ty = -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0t
導出

質量 mm の物体に働く力は、鉛直下向きの重力のみである。 ここでは鉛直上向きを yy 軸の正の向きにとっているため、物体に働く力の yy 成分は Fy=mgF_y = -mg と表される。 したがって、加速度を aya_y とすると、運動方程式 Fy=mayF_y = ma_y より

mg=may-mg = m a_y

両辺を mm で割ることで、物体の加速度は時間によらず ay=ga_y = -g(一定)であることがわかる。

速度

加速度 aya_y は速度 vyv_y の時間微分 dvydt\dfrac{dv_y}{dt} であるから、次の微分方程式が成り立つ。

dvydt=g\dfrac{dv_y}{dt} = -g

これを時刻 tt について積分する。C1C_1 を積分定数として、

vy=(g)dt=gt+C1v_y = \int (-g) \,dt = -gt + C_1

初期条件として、t=0t=0 (投げ上げた瞬間)のとき、初速 vy=v0v_y = v_0 であるから、

v0=g0+C1C1=v0v_0 = -g \cdot 0 + C_1 \quad \therefore C_1 = v_0

これより、時刻 tt における速度の式が導かれる。

vy=gt+v0v_y = -gt + v_0位置

速度 vyv_y は位置 yy の時間微分 dydt\dfrac{dy}{dt} であるから、上で求めた速度の式より、

dydt=gt+v0\dfrac{dy}{dt} = -gt + v_0

これをさらに時刻 tt について積分する。C2C_2 を積分定数として、

y=(gt+v0)dt=12gt2+v0t+C2y = \int (-gt + v_0) \,dt = -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0t + C_2

初期条件として、投げ上げた点を原点にとっているため、t=0t=0 のとき位置 y=0y = 0 である。

0=12g02+v00+C2C2=00 = -\dfrac{1}{2}g \cdot 0^2 + v_0 \cdot 0 + C_2 \quad \therefore C_2 = 0

これより、時刻 tt における位置の式が導かれる。

y=12gt2+v0ty = -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0t
公式

水平投射

物体を初速 v0v_0 で水平右向きに投げた点を原点にとり、水平右向きに xx 軸、鉛直下向きに yy 軸をとる。重力加速度を gg とし、空気抵抗はないものとする。

速度

時刻 tt における、物体の速度ベクトル v\boldsymbol{v} は次のように求める。

v=(vxvy)=(v0gt)\boldsymbol{v} = \begin{pmatrix} v_x \\ v_y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} v_0 \\ gt \end{pmatrix}位置

時刻 tt における、物体の位置ベクトル r\boldsymbol{r} は次のように求める。

r=(xy)=(v0t12gt2)\boldsymbol{r} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} v_0t \\ \dfrac{1}{2}gt^2 \end{pmatrix}座標

物体の軌跡の式は次のように求める。

y=g2v02x2y = \dfrac{g}{2{v_0}^2}x^2
図-
導出
速度

各成分の加速度を時刻 tt で積分する。Cx,CyC_x, C_y を積分定数とすると、

{vx=axdt=0dt=Cxvy=aydt=gdt=gt+Cy\begin{cases} \displaystyle v_x = \int a_x \,dt = \int 0 \,dt = C_x \\ \displaystyle v_y = \int a_y \,dt = \int g \,dt = gt + C_y \end{cases}

初期条件として、t=0t=0 のとき、物体は水平方向に初速 v0v_0 を与えられており、鉛直方向の初速は 00 である。

{vx(0)=v0    Cx=v0vy(0)=0    Cy=0\begin{cases} v_x(0) = v_0 & \implies C_x = v_0 \\ v_y(0) = 0 & \implies C_y = 0 \end{cases}

したがって、速度ベクトルは次のように導かれる。

v=(v0gt)\boldsymbol{v} = \begin{pmatrix} v_0 \\ gt \end{pmatrix}位置

上で求めた速度をさらに時刻 tt で積分する。C1,C2C_1, C_2 を積分定数とすると、

{x=vxdt=v0dt=v0t+C1y=vydt=gtdt=12gt2+C2\begin{cases} \displaystyle x = \int v_x \,dt = \int v_0 \,dt = v_0t + C_1 \\ \displaystyle y = \int v_y \,dt = \int gt \,dt = \dfrac{1}{2}gt^2 + C_2 \end{cases}

初期条件として、投げた点を原点(0,00, 0)としているため、t=0t=0 のとき x=0,y=0x=0, y=0 である。

{x(0)=0    C1=0y(0)=0    C2=0\begin{cases} x(0) = 0 & \implies C_1 = 0 \\ y(0) = 0 & \implies C_2 = 0 \end{cases}

したがって、位置ベクトルは次のように導かれる。

r=(v0t12gt2)\boldsymbol{r} = \begin{pmatrix} v_0t \\ \dfrac{1}{2}gt^2 \end{pmatrix}座標

x=v0tx=v_0ty=12gt2y=\dfrac{1}{2}gt^2 だから、tt を消去して

y=12gt2=12g(xv0)2=g2v02x2y = \dfrac{1}{2}gt^2 = \dfrac{1}{2}g\left(\dfrac{x}{v_0}\right)^2 = \dfrac{g}{2{v_0}^2}x^2
公式

斜方投射

水平右向きに xx 軸、鉛直上向きに yy 軸をとり、物体を xx 軸正の向きと角度 θ\theta をなす方向に初速 v0v_0 で投げた点を原点にとる。重力加速度を gg とする。

速度

時刻 tt における速度ベクトル v\boldsymbol{v} は次のように求める。

v=(v0cosθgt+v0sinθ)\boldsymbol{v} = \begin{pmatrix} v_0\cos\theta \\ -gt + v_0\sin\theta \end{pmatrix}位置

時刻 tt における位置ベクトル r\boldsymbol{r} は次のように求める。

r=(v0tcosθ12gt2+v0tsinθ)\boldsymbol{r} = \begin{pmatrix} v_0t\cos\theta \\ -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0t\sin\theta \end{pmatrix}座標

物体の座標が (x,y)(x, y) のとき、yyxx を用いて次のように求める。

y=g2v02(1+tan2θ)x2+xtanθy = -\dfrac{g}{2{v_0}^2}\left(1+\tan^2\theta\right)x^2 + x\tan\theta最大飛距離を与える角度

xx 軸方向に物体が最大飛距離を与える角度 θ\theta は次の式を満たす。

θ=π4\theta = \dfrac{\pi}{4}
飛距離 (Range)
最高点 (Max Height)
図-
導出

物体に働く力は鉛直下向きの重力のみである。運動方程式 F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} を成分ごとに立てると、

{max=0    ax=0may=mg    ay=g\begin{cases} m a_x = 0 & \implies a_x = 0 \\ m a_y = -mg & \implies a_y = -g \end{cases}速度

加速度を時刻 tt で積分する。C1,C2C_1, C_2 を積分定数とすると、

{vx=0dt=C1vy=(g)dt=gt+C2\begin{cases} \displaystyle v_x = \int 0 \,dt = C_1 \\ \displaystyle v_y = \int (-g) \,dt = -gt + C_2 \end{cases}

初期条件として、t=0t=0 における速度ベクトルは v0=(v0cosθv0sinθ)\boldsymbol{v}_0 = \begin{pmatrix} v_0 \cos\theta \\ v_0 \sin\theta \end{pmatrix} であるから、

{vx(0)=v0cosθ    C1=v0cosθvy(0)=v0sinθ    C2=v0sinθ\begin{cases} v_x(0) = v_0 \cos\theta & \implies C_1 = v_0 \cos\theta \\ v_y(0) = v_0 \sin\theta & \implies C_2 = v_0 \sin\theta \end{cases}

よって、速度ベクトル v=(v0cosθgt+v0sinθ)\boldsymbol{v} = \begin{pmatrix} v_0\cos\theta \\ -gt + v_0\sin\theta \end{pmatrix} が導かれる。

位置

速度をさらに時刻 tt で積分する。C3,C4C_3, C_4 を積分定数とすると、

{x=v0cosθdt=v0tcosθ+C3y=(gt+v0sinθ)dt=12gt2+v0tsinθ+C4\begin{cases} \displaystyle x = \int v_0 \cos\theta \,dt = v_0 t \cos\theta + C_3 \\ \displaystyle y = \int (-gt + v_0 \sin\theta) \,dt = -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0 t \sin\theta + C_4 \end{cases}

初期条件として、原点(0,00,0)から投げているため t=0t=0x=0,y=0x=0, y=0 である。したがって C3=0,C4=0C_3 = 0, C_4 = 0 となり、位置ベクトル r=(v0tcosθ12gt2+v0tsinθ)\boldsymbol{r} = \begin{pmatrix} v_0t\cos\theta \\ -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0t\sin\theta \end{pmatrix} が導かれる。

座標

位置の成分表示から時刻 tt を消去する。xx の式より t=xv0cosθt = \dfrac{x}{v_0 \cos\theta}。これを yy の式に代入すると、

y=12g(xv0cosθ)2+v0(xv0cosθ)sinθ=g2v02cos2θx2+xtanθ\begin{aligned} y &= -\dfrac{1}{2}g\left(\dfrac{x}{v_0\cos\theta}\right)^2 + v_0\left(\dfrac{x}{v_0\cos\theta}\right)\sin\theta \\ &= -\dfrac{g}{2{v_0}^2\cos^2\theta}x^2 + x\tan\theta \end{aligned}

ここで、三角関数の相互関係 1cos2θ=1+tan2θ\dfrac{1}{\cos^2\theta} = 1 + \tan^2\theta を用いて tanθ\tan\theta のみを用いた軌道の式を求めると

y=g2v02(1+tan2θ)x2+xtanθy = -\dfrac{g}{2{v_0}^2}\left(1+\tan^2\theta\right)x^2 + x\tan\theta最大飛距離を与える角度

まず、物体が再び地上(y=0y=0)に戻るまでの滞空時間 tft_f を求める。位置 yy の式より

y=t(v0sinθ12gt)=0y = t \left( v_0 \sin\theta - \dfrac{1}{2}gt \right) = 0

投げ上げた瞬間(t=0t=0)を除外すると、tf=2v0sinθgt_f = \dfrac{2v_0 \sin\theta}{g} であり、このときの水平到達距離 RR は、水平方向の位置の式 x=v0tcosθx = v_0 t \cos\theta に代入して

R=v0cosθ2v0sinθg=v02g(2sinθcosθ)\begin{aligned} R &= v_0 \cos\theta \cdot \dfrac{2v_0 \sin\theta}{g} \\ &= \dfrac{{v_0}^2}{g} \cdot (2\sin\theta\cos\theta) \end{aligned}

ここで、三角関数に関する数学公式 2sinθcosθ=sin2θ2\sin\theta\cos\theta = \sin 2\theta を用いると、飛距離 RR は角度 θ\theta の関数として

R(θ)=v02sin2θgR(\theta) = \dfrac{{v_0}^2 \sin 2\theta}{g}

初速 v0v_0 と重力加速度 gg が一定であるとき、RR が最大値をとるのは sin2θ\sin 2\theta が最大値 11 をとるときである。

sin2θ=1    2θ=π2θ=π4\sin 2\theta = 1 \implies 2\theta = \dfrac{\pi}{2} \quad \therefore \theta = \dfrac{\pi}{4}
説明

空気抵抗がある場合、角度 π4\dfrac{\pi}{4}4545^\circ)よりも、わずかに小さい角度で投げる方が飛距離が伸びる。

公式

質点の到達可能範囲(包絡線)

物体を初速 vv で投げた点を xyxy 座標の原点に取り、鉛直上向きに zz 軸を取る。重力加速度を gg とし、空気抵抗はないものとするとき、物体の到達可能面の式(境界を表す曲面)は次のように求める。

z=v22gg2v2(x2+y2)z = \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{g}{2v^2}(x^2 + y^2)
X / Y(奥行) / Z(高さ)
20
45°
45°
ドーム(包絡面)の大きさ
高さ:
半径:
マウスでドラッグして視点を回転、スクロールでズームできます。パソコンではCtrlキー(MacではCommandキー)を押しながらドラッグすると平行移動も可能です。 赤い軌道が常に青い半透明のドーム(到達可能面)の中であることを確認できます。
図-
導出

空間は zz 軸周りに対称であるため、水平方向の距離を r=x2+y2r = \sqrt{x^2 + y^2} とし、投射角を θ\theta とする。時刻 tt における物体の位置は次のように表せる。

r=(vcosθ)tz=(vsinθ)t12gt2\begin{aligned} r &= (v \cos\theta) t \quad \dots \text{①}\\ z &= (v \sin\theta) t - \dfrac{1}{2}gt^2 \quad \dots \text{②} \end{aligned}

v0v\neq 0のとき、①式より t=rvcosθt = \dfrac{r}{v \cos\theta}であり、これを②式に代入すると

z=(vsinθ)(rvcosθ)12g(rvcosθ)2=rsinθcosθgr22v2cos2θ\begin{aligned} z &= (v \sin\theta) \left( \dfrac{r}{v \cos\theta} \right) - \dfrac{1}{2}g \left( \dfrac{r}{v \cos\theta} \right)^2 \\ &= r \dfrac{\sin\theta}{\cos\theta} - \dfrac{gr^2}{2v^2 \cos^2\theta} \end{aligned}

ここで、三角関数の相互関係 1cos2θ=1+tan2θ\dfrac{1}{\cos^2\theta} = 1 + \tan^2\theta を用いて tanθ\tan\theta のみで書き換えると、

z=rtanθgr22v2(1+tan2θ)=gr22v2tan2θ+rtanθgr22v2\begin{aligned} z &= r \tan\theta - \dfrac{gr^2}{2v^2} (1 + \tan^2\theta) \\ &= - \dfrac{gr^2}{2v^2} \tan^2\theta + r \tan\theta - \dfrac{gr^2}{2v^2} \quad \dots \text{③} \end{aligned}導出1

ある座標 (r,z)(r, z) に到達可能であるとは、③式を満たす実数 tanθ\tan\theta が存在することと同値である。tanθ=k\tan\theta = k とおき、③式を kk についての2次方程式として整理すると

gr22v2k2rk+(z+gr22v2)=0\dfrac{gr^2}{2v^2} k^2 - r k + \left( z + \dfrac{gr^2}{2v^2} \right) = 0

この方程式が実数解を持つ条件(判別式 D0D \ge 0)を考える。

D=(r)24gr22v2(z+gr22v2)0D = (-r)^2 - 4 \cdot \dfrac{gr^2}{2v^2} \left( z + \dfrac{gr^2}{2v^2} \right) \ge 0

r0r \neq 0 のとき、両辺を r2r^2 で割り、さらに v22g\dfrac{v^2}{2g} を掛けて整理すると、

zv22ggr22v2=v22gg2v2(x2+y2)z \le \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{gr^2}{2v^2} = \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{g}{2v^2}(x^2 + y^2)

この等号成立時が求める到達可能面である。

導出2

ある地点 rr を固定したとき、高さ zz が最大となる角度 θ\theta を探す。③式を tanθ\tan\theta について平方完成すると、

z=gr22v2{tan2θ2v2grtanθ}gr22v2=gr22v2{(tanθv2gr)2(v2gr)2}gr22v2=gr22v2(tanθv2gr)2+v22ggr22v2\begin{aligned} z &= - \dfrac{gr^2}{2v^2} \left\{ \tan^2\theta - \dfrac{2v^2}{gr} \tan\theta \right\} - \dfrac{gr^2}{2v^2} \\ &= - \dfrac{gr^2}{2v^2} \left\{ \left( \tan\theta - \dfrac{v^2}{gr} \right)^2 - \left( \dfrac{v^2}{gr} \right)^2 \right\} - \dfrac{gr^2}{2v^2} \\ &= - \dfrac{gr^2}{2v^2} \left( \tan\theta - \dfrac{v^2}{gr} \right)^2 + \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{gr^2}{2v^2} \end{aligned}

第1項は tanθ=v2gr\tan\theta = \dfrac{v^2}{gr} のとき最大値 00 をとる。したがって、到達可能な最高の高さは、定数項部分として求まる。

z=v22ggr22v2=v22gg2v2(x2+y2)z = \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{gr^2}{2v^2} = \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{g}{2v^2}(x^2 + y^2)

なお r=0r=0 のとき、すなわち物体が zz 軸上を運動する(v=0v = 0 のときもふくむ)とき、物体を真上に投げ上げた場合に相当する。 物体の初期位置z=0z=0、初速度は vv で、位置zzにおいて速度は00、鉛直上向きにzz軸をとっているから物体の加速度はg-gだから

02v2=2(g)zv2=2gzz=v22g\begin{aligned} 0^2 - v^2 &= 2(-g)z\\ -v^2 &= -2gz\\ z &= \frac{v^2}{2g} \end{aligned}

したがって本公式は r=0r=0 および v=0v=0 のときもなりたつ。

説明

等号成立条件は次のように、後述する力学的エネルギー保存の法則を用いて確認することもできる。

投げ上げた瞬間の運動エネルギー K=12mv2K = \dfrac{1}{2}mv^2 であり、最高点での位置エネルギー U=mgzU = mgz だから、エネルギー保存則(K=UK = U)より

12mv2=mgzv22=gzz=v22g\begin{aligned} \dfrac{1}{2}mv^2 &= mgz\\ \frac{v^2}{2} &= gz\\ z &= \frac{v^2}{2g} \end{aligned}

この到達可能範囲の式において、不等号(\le)は物体が飛んでくる可能性のある「全領域」を指し、等号(==)はその領域の「ふち(面)」を指している。

ある標的(座標 r,zr, z)を狙うとき、判別式 D>0D > 0 となる領域内部では、tanθ\tan \theta の解が2つ存在する。これは、同じ標的に対して「低い角度で鋭く投げる軌道(低射弾道)」と「高い角度で大きく弧を描く軌道(高射弾道)」の2通りで命中させられることを意味している。

標的が遠ざかり、境界である到達可能面の上に位置すると、この2通りの投射角の差は次第に縮まり、最終的に D=0D = 0、すなわち重解(たった1通りの角度)となる。これは、低射弾道と高射弾道のルートが完全に重なり、その点に届かせるための「唯一無二の投げ方」しか存在しなくなった状態を意味する。このとき、物体の軌道は境界となる面に対してちょうど接する形となる。

数学的には、この等号が成立する面は無数の放物線すべてを含む「包絡線(ほうらくせん)」と呼ばれる。一つひとつの放物線は、この面を決して突き破ることはできず、この面に触れたとしてもたった一点で触れて落下する。この「触れる点」を繋ぎ合わせたものが境界 z=v22ggr22v2z = \dfrac{v^2}{2g} - \dfrac{gr^2}{2v^2} である。

公式

台から投げる物体に最大飛距離を与える角度

水平右向きに xx 軸、鉛直上向きに yy 軸をとり、原点から高さ hh の地点から物体を xx 軸正の向きと角度 θ\theta をなす方向に初速 v0v_0 で投げたとき、xx 軸方向に物体が最大飛距離を与える角度 θ\theta は次の式を満たす。なお重力加速度を gg とする。

tanθ=v0v02+2gh\tan \theta = \dfrac{v_0}{\sqrt{{v_0}^2 + 2gh}}
導出

打ち上げ地点を (0,0)(0, 0) とすると、落下地点(地面)の座標は (x,h)(x, -h) と表せるから斜方投射の軌道の式(座標の式)

y=g2v02(1+tan2θ)x2+xtanθy = -\dfrac{g}{2{v_0}^2}\left(1+\tan^2\theta\right)x^2 + x\tan\theta

を用いて、ある角 ϕ\phi で打ち上げた物体の軌道の式は

h=xtanϕgx22v02(1+tan2ϕ)-h = x \tan\phi - \dfrac{gx^2}{2{v_0}^2} (1 + \tan^2\phi) \quad \dots \text{①}

ここで、xx は角度 ϕ\phi の関数 x(ϕ)x(\phi) であり、投げる角度を一つ定めると飛距離を一意に定めることのできる関数である。

したがって飛距離 xx が最大値をとるとき、すなわちこれ以上 ϕ\phi を増減しても飛距離 xx が伸びないとき、角度を微小に変えて飛距離がどれだけ変化するかを示す変化率

dxdϕ=0\dfrac{dx}{d\phi} = 0

を満たす角 ϕ\phi が存在する。ゆえにまず①式の両辺を ϕ\phi で微分すると、積の微分に関する数学公式 {f(x)g(x)}=f(x)g(x)+f(x)g(x)\{f(x)g(x)\}' = f'(x)g(x) + f(x)g'(x) および三角関数の微分に関する数学公式 (tanx)=1cos2x=sec2x(\tan x)' = \dfrac{1}{\cos^2 x} = \sec^2 x を用いて

0=dxdϕtanϕ+xsec2ϕg2v02[2xdxdϕ(1+tan2ϕ)+x2(2tanϕsec2ϕ)]0 = \dfrac{dx}{d\phi} \tan\phi + x \sec^2\phi - \dfrac{g}{2{v_0}^2} \left[ 2x \dfrac{dx}{d\phi} (1 + \tan^2\phi) + x^2 (2 \tan\phi \sec^2\phi) \right]

ここで dxdϕ=0\dfrac{dx}{d\phi} = 0 を代入して整理すると、

xsec2ϕ=g2v02x2(2tanϕsec2ϕ)1=gxtanϕv02x=v02gtanϕ\begin{aligned} x \sec^2\phi &= \dfrac{g}{2{v_0}^2} \cdot x^2 (2 \tan\phi \sec^2\phi) \\ 1 &= \dfrac{gx \tan\phi}{{v_0}^2} \\ x &= \dfrac{{v_0}^2}{g \tan\phi} \quad \dots \text{②} \end{aligned}

②式を満たす角 ϕ=θ\phi=\theta とすると、①式より

h=(v02gtanθ)tanθg2v02(v02gtanθ)2(1+tan2θ)=v02gv022gtan2θ(1+tan2θ)\begin{aligned} -h &= \left( \dfrac{{v_0}^2}{g \tan\theta} \right) \tan\theta - \dfrac{g}{2{v_0}^2} \left( \dfrac{{v_0}^2}{g \tan\theta} \right)^2 (1 + \tan^2\theta)\\ &= \dfrac{{v_0}^2}{g} - \dfrac{{v_0}^2}{2g \tan^2\theta} (1 + \tan^2\theta) \end{aligned}

したがって両辺に 2gtan2θ2g \tan^2\theta を掛けて整理して

2ghtan2θ=2v02tan2θv02(1+tan2θ)2ghtan2θ=v02tan2θv02(v02+2gh)tan2θ=v02\begin{aligned} -2gh \tan^2\theta &= 2{v_0}^2 \tan^2\theta - {v_0}^2 (1 + \tan^2\theta) \\ -2gh \tan^2\theta &= {v_0}^2 \tan^2\theta - {v_0}^2 \\ ({v_0}^2 + 2gh) \tan^2\theta &= {v_0}^2 \end{aligned}

これより、最大飛距離を与える角度 θ\theta の条件は

tan2θ=v02v02+2gh    tanθ=v0v02+2gh\tan^2\theta = \dfrac{{v_0}^2}{{v_0}^2 + 2gh} \implies \tan \theta = \dfrac{v_0}{\sqrt{{v_0}^2 + 2gh}}
説明

包絡線(到達可能面)を用いて求めることもできる。

到達可能範囲の境界の式は y=v022ggx22v02y = \dfrac{{v_0}^2}{2g} - \dfrac{gx^2}{2{v_0}^2} である。地面 y=hy = -h における最大到達点 xx

h=v022ggx22v02    x=v0gv02+2gh-h = \dfrac{{v_0}^2}{2g} - \dfrac{gx^2}{2{v_0}^2} \implies x = \dfrac{v_0}{g}\sqrt{{v_0}^2 + 2gh}

包絡線の 導出2 で、境界上の点に到達するための投射角は tanθ=v02gx\tan \theta = \dfrac{{v_0}^2}{gx} で与えられると導出した。これを用いると

tanθ=v02gv0gv02+2gh=v0v02+2gh\tan \theta = \dfrac{{v_0}^2}{g \cdot \dfrac{v_0}{g}\sqrt{{v_0}^2 + 2gh}} = \dfrac{v_0}{\sqrt{{v_0}^2 + 2gh}}

を得る。「最も遠い点(境界)」を考えることは、数学的には「変数を固定したときの最大値を追跡する」ことと等価である。

公式

2落体の衝突条件(モンキーハンティング)

物体を xx 軸正の向きと角度 θ\theta をなす方向に初速 v0v_0 で斜方投射した点を原点とし、同時に座標 (L,h)(L, h) から小球を自由落下させる。このとき、2物体が衝突するような θ\theta は次の式を満たす。

tanθ=hL\tan\theta = \dfrac{h}{L}
重力による落下量
標的も弾丸も、照準線(点線)から全く同じ距離 だけ自由落下するため、空中で必ず衝突します。
図-
導出

時刻 tt における物体の位置 (x,y)(x, y)

x=v0tcosθ,y=12gt2+v0tsinθx = v_0t\cos\theta, \quad y = -\dfrac{1}{2}gt^2 + v_0t\sin\theta

物体の xx 座標が LL になるのは t=Lv0cosθt=\dfrac{L}{v_0\cos\theta} のときで、このとき yy 座標は

y=LtanθgL22v02cos2θy = L\tan\theta - \dfrac{gL^2}{2{v_0}^2\cos^2\theta}

一方、自由落下する小球の yy 座標は

y=h12gt2=hgL22v02cos2θy = h - \dfrac{1}{2}gt^2 = h - \dfrac{gL^2}{2{v_0}^2\cos^2\theta}

両者の yy 座標が一致すれば衝突するので、

LtanθgL22v02cos2θ=hgL22v02cos2θL\tan\theta - \dfrac{gL^2}{2{v_0}^2\cos^2\theta} = h - \dfrac{gL^2}{2{v_0}^2\cos^2\theta}

これを解いて tanθ=hL\tan\theta = \dfrac{h}{L}

公式

2物体の空中衝突条件

xyxy 平面において、原点 (0,0)(0, 0) にある質点Aを初速ベクトル vA\boldsymbol{v}_{\mathrm{A}} で、座標 (l,0)(l, 0) にある質点Bを初速ベクトル vB\boldsymbol{v}_{\mathrm{B}} で同時に斜方投射する。重力加速度を gg とし、それぞれの初速を次のように成分表示する。

vA=(vAxvAy),vB=(vBxvBy)\boldsymbol{v}_{\mathrm{A}} = \begin{pmatrix} v_{\mathrm{A}x} \\ v_{\mathrm{A}y} \end{pmatrix}, \quad \boldsymbol{v}_{\mathrm{B}} = \begin{pmatrix} v_{\mathrm{B}x} \\ v_{\mathrm{B}y} \end{pmatrix}衝突条件

二つの物体が空中で衝突するための必要条件は、二つの初速度の鉛直成分が等しく、かつ水平方向にAがBに追いつく相対速度を持つことである。

vAy=vByかつvAx>vBxv_{\mathrm{A}y} = v_{\mathrm{B}y} \quad \text{かつ} \quad v_{\mathrm{A}x} > v_{\mathrm{B}x}衝突時刻

上記の条件を満たすとき、投射から衝突までの時間 tt は次のように求める。

t=lvAxvBxt = \dfrac{l}{v_{\mathrm{A}x} - v_{\mathrm{B}x}}

(※ 実際に空中で衝突するためには、この時刻において yy 座標が正である条件 vAyt12gt2>0v_{\mathrm{A}y}t - \frac{1}{2}gt^2 > 0 を満たす必要がある)

導出
解法1:成分ごとの運動方程式による導出

それぞれの質点の時刻 tt における位置ベクトル rA\boldsymbol{r}_{\mathrm{A}} および rB\boldsymbol{r}_{\mathrm{B}} を、成分ごとに立式する。質点Aは原点から、質点Bは (l,0)(l, 0) から投射されるため、

rA=(xAyA)=(vAxtvAyt12gt2)\boldsymbol{r}_{\mathrm{A}} = \begin{pmatrix} x_{\mathrm{A}} \\ y_{\mathrm{A}} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} v_{\mathrm{A}x} t \\ v_{\mathrm{A}y} t - \dfrac{1}{2}gt^2 \end{pmatrix}rB=(xByB)=(l+vBxtvByt12gt2)\boldsymbol{r}_{\mathrm{B}} = \begin{pmatrix} x_{\mathrm{B}} \\ y_{\mathrm{B}} \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} l + v_{\mathrm{B}x} t \\ v_{\mathrm{B}y} t - \dfrac{1}{2}gt^2 \end{pmatrix}

二つの物体が衝突するということは、ある時刻 tt において rA=rB\boldsymbol{r}_{\mathrm{A}} = \boldsymbol{r}_{\mathrm{B}} が成り立つということである。まず yy 成分(鉛直方向)が等しくなる条件を比較すると、

vAyt12gt2=vByt12gt2v_{\mathrm{A}y} t - \dfrac{1}{2}gt^2 = v_{\mathrm{B}y} t - \dfrac{1}{2}gt^2

共通する重力落下分 12gt2-\frac{1}{2}gt^2 が相殺され、時間 t>0t>0 で両辺を割ることで vAy=vByv_{\mathrm{A}y} = v_{\mathrm{B}y} という条件が導かれる。 次に xx 成分(水平方向)が等しくなる条件を比較すると、

vAxt=l+vBxtv_{\mathrm{A}x} t = l + v_{\mathrm{B}x} t

これを tt について整理すると (vAxvBx)t=l(v_{\mathrm{A}x} - v_{\mathrm{B}x})t = l となる。距離 l>0l > 0 かつ時間 t>0t > 0 でなければならないため、vAx>vBxv_{\mathrm{A}x} > v_{\mathrm{B}x} であることが要求され、同時に衝突時刻 t=lvAxvBxt = \dfrac{l}{v_{\mathrm{A}x} - v_{\mathrm{B}x}} が導出される。

解法2:相対位置ベクトルによる導出

相対速度の概念を用いて、質点Aから見た質点Bの相対的な運動を考える。 質点Aおよび質点Bに働く加速度はともに鉛直下向きの重力 g=(0g)\boldsymbol{g} = \begin{pmatrix} 0 \\ -g \end{pmatrix} であるから、位置ベクトルはそれぞれ次のように書ける。

rA=vAt+12gt2\boldsymbol{r}_{\mathrm{A}} = \boldsymbol{v}_{\mathrm{A}}t + \dfrac{1}{2}\boldsymbol{g}t^2rB=rB0+vBt+12gt2(ただし  rB0=(l0))\boldsymbol{r}_{\mathrm{B}} = \boldsymbol{r}_{\mathrm{B}0} + \boldsymbol{v}_{\mathrm{B}}t + \dfrac{1}{2}\boldsymbol{g}t^2 \quad \left( ただし \; \boldsymbol{r}_{\mathrm{B}0} = \begin{pmatrix} l \\ 0 \end{pmatrix} \right)

Aから見たBの相対位置ベクトル rAB\boldsymbol{r}_{\mathrm{AB}} は、これらを差し引くことで計算できる。

rAB=rBrA=rB0+(vBvA)t=(l0)+(vBxvAxvByvAy)t\begin{aligned} \boldsymbol{r}_{\mathrm{AB}} &= \boldsymbol{r}_{\mathrm{B}} - \boldsymbol{r}_{\mathrm{A}} \\ &= \boldsymbol{r}_{\mathrm{B}0} + (\boldsymbol{v}_{\mathrm{B}} - \boldsymbol{v}_{\mathrm{A}})t \\ &= \begin{pmatrix} l \\ 0 \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} v_{\mathrm{B}x} - v_{\mathrm{A}x} \\ v_{\mathrm{B}y} - v_{\mathrm{A}y} \end{pmatrix} t \end{aligned}

衝突するとき、相対距離はゼロになるため rAB=0\boldsymbol{r}_{\mathrm{AB}} = \mathbf{0} となる。このベクトル方程式の各成分が 00 になる条件を考えると、

{l+(vBxvAx)t=0    t=lvAxvBx(vByvAy)t=0    vAy=vBy\begin{cases} l + (v_{\mathrm{B}x} - v_{\mathrm{A}x})t = 0 \quad \implies t = \dfrac{l}{v_{\mathrm{A}x} - v_{\mathrm{B}x}} \\ (v_{\mathrm{B}y} - v_{\mathrm{A}y})t = 0 \quad \implies v_{\mathrm{A}y} = v_{\mathrm{B}y} \end{cases}

となり、成分ごとの運動方程式を解いた場合と全く同じ結論が、より見通し良く導き出される。

説明

相対速度とガリレイの相対性原理

解法2が示す事実は、物理学において極めて深遠な意味を持つ。両物体とも重力 g\boldsymbol{g} という同じ加速度を受けているため、一方から他方を見たときの「相対加速度」は gg=0\boldsymbol{g} - \boldsymbol{g} = \mathbf{0} となる。すなわち、地上から見れば互いに放物線を描く複雑な運動であっても、AからB(あるいはBからA)を見れば、重力の影響が完全に相殺され、単なる「等速直線運動」に見えるのである。

この視点に立つと、衝突条件である vAy=vByv_{\mathrm{A}y} = v_{\mathrm{B}y} は、「Aから見てBが上下に動かず、真正面(水平方向)から一直線に向かってくるように見えるための条件」と解釈できる。この考え方を応用した有名な物理の思考実験に「モンキーハンティング(木から落ちる猿を銃で撃つ実験)」がある。猿と弾丸が同時に同じ重力落下を始めるため、「相対加速度がゼロになる系」から見れば弾丸は直線的に飛ぶように見える。ゆえに、面倒な放物線の計算を一切行わずとも「最初から猿に真っ直ぐ狙いを定めて撃てば必ず当たる」という結論を直感的に導き出すことができる。ベクトルと相対速度の概念を導入する真の価値は、このような「現象の本質を抜き出し、運動を劇的にシンプルに捉え直すこと」にある。