1-2-3. 運動の法則
The Laws of Motion
ニュートンの運動の法則
ニュートンの運動の法則
物体に外力がはたらかないとき,またははたらいている力がつり合っているとき,静止している物体は静止を続け,動いている物体は等速直線運動を続ける。
運動の第二法則(運動の法則)質量 の物体に加えている合力 と,そのときの加速度ベクトル の間には次の関係が成り立つ。
運動の第三法則(作用・反作用の法則)ある物体Aが他方の物体Bに力 をはたらかせるとき,物体Bは物体Aに同じ大きさで逆向きの力 を及ぼす。
3つの法則がなす力学の体系 第一法則は,一見すると「 ならば である」という第二法則の特殊ケースに過ぎないように思える。しかし,物理学における第一法則の真の役割は,**「慣性系(加速度を持たず,運動の法則がそのまま成り立つ座標系)が存在することの宣言」**にある。 また,第三法則は物体間の「力の授受のルール」を定めている。これにより,複数の物体を「1つのシステム(系)」としてまとめたとき,内部で及ぼし合う力(内力)が完全に相殺され,系の運動が「外力」のみによって決定されるという,運動量保存則の強力な基盤となる。
束縛条件を伴う運動
ひもでつながった2物体
質量 の物体Aと質量 の物体Bを軽くて伸びない糸でつなぎ,物体Aを大きさ の力で鉛直上向きに引く。重力加速度を とするとき,全体の加速度 と糸の張力 は次のように求める。
鉛直上向きを正の向きとする。物体Aの下端にはたらく張力を ,物体Bの上端にはたらく張力を とする。
軽い糸の張力がどこでも等しいことの証明質量 ,長さ の糸を考え,上部 と下部 で分割した任意の点における張力を とする。上部と下部の質量はそれぞれ比率に応じて配分されるため,Aと糸の上部をまとめた運動方程式と,Bと糸の下部をまとめた運動方程式は次のように立てられる。
ここで,糸は「軽い( )」とみなせるため,極限をとると の値(すなわち糸のどの位置か)に関わらず方程式から の項が消滅する。このとき作用反作用の法則により糸の両端が引く力は等しくなり, とおいて扱うことができる。
加速度と張力の計算物体Aおよび物体Bに対する運動方程式はそれぞれ次のようになる。
これら2式を足し合わせると,内力である張力 が相殺され,
が得られる。この を物体Bの運動方程式に代入して整理すると,
となり,張力の式が導出される。
箱の中の物体
質量 の箱の中に質量 の物体を静かに置き,箱を大きさ の力で鉛直上向きに引き上げる。全体の加速度 と,物体が箱から受ける垂直抗力 は次のように求める。
物体は箱から上向きの垂直抗力 を受け,作用反作用の法則により,箱は物体から下向きの力 を受ける。鉛直上向きを正としてそれぞれの運動方程式を立てると,
両辺を足し合わせて内力 を消去すると,
これを物体の運動方程式に代入し, について解く。
引き上げられる滑車と相対運動
質量 の滑車に軽くて伸びない糸をかけ,両端に質量 の物体をつるす。この滑車を大きさ の力で鉛直上向きに引き上げる。滑車の加速度 と,糸の張力 は次のように求める。
(ただし, は物体系の換算質量)
鉛直上向きを正とし,滑車の座標を ,物体A, Bの座標を ,それぞれの加速度を とする。
幾何学的な束縛条件の微分糸の長さが一定であるため,滑車の半径を として次の方程式が成り立つ。
この両辺を時間 で2階微分すると,加速度に関する束縛条件が得られる。
運動方程式の立式と連立滑車には上向きに ,下向きに2つの張力 と重力 がはたらく。これらを踏まえて3つの運動方程式を立てる。
を束縛条件の式に代入する。
これを について解くと,
ここで,滑車から見たAとBの等価的な質量を表す換算質量 を用いると, となる。 これを滑車の運動方程式に代入する。
この を用いて張力 を求め直すと,
となり,一般化された滑車の運動が完全に解き明かされる。
斜面上の物体と束縛条件
固定された傾き の斜面上を質量 の物体が滑り落ちるときの加速度の大きさ と垂直抗力 は,
動く斜面上の物体なめらかな水平面上を自由に動く質量 の斜面(傾き )の上を,質量 の物体が滑り落ちる。水平右向き(斜面が後退する向き)を 軸正,鉛直上向きを 軸正とする。 物体の加速度ベクトル ,斜面の加速度 ,垂直抗力 は次のように求める。
(※ここでは 軸下向きではなく上向きを正にとり,落下加速度としてマイナス符号を付している)
「動く斜面」の問題は,座標系を傾けずに水平・鉛直のまま解くことで一般性を保ちつつ導出できる。
幾何学的な束縛条件斜面の座標を ,物体の座標を とすると,物体が常に斜面上にあるための条件は,
両辺を時間 で2階微分し,加速度の関係式を得る。
運動方程式の立式と連立物体と斜面にそれぞれ運動方程式を立てる。
これらを①式に代入して,内力である を求める。
ゆえに,垂直抗力 は
となる。これを各加速度の式に代入することで, がすべて導出される。 (※ の極限をとると,斜面が動かない「固定された斜面」の結果 に完全に一致する)