1-2-1. 力

Force

重力

公式

重力

質量 mm の物体にはたらく重力 W\boldsymbol{W} は,重力加速度を g\boldsymbol{g} として次のように表す。

W=mg\boldsymbol{W} = m\boldsymbol{g}
導出

ニュートンの運動方程式 F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} において,物体が重力のみを受けて落下するときの加速度(重力加速度)を g\boldsymbol{g} とおく。このとき,物体にはたらいている力 F\boldsymbol{F} が重力 W\boldsymbol{W} そのものであるから,

W=mg\boldsymbol{W} = m\boldsymbol{g}

が導かれる。

説明

質量と重さの違い 「質量 mm」は物体そのものの動かしにくさ(慣性)を表す固有の量であり,場所によって変化しない。対して「重力 W\boldsymbol{W}(重さ)」は,その地点の重力場 g\boldsymbol{g} によって決まる「力」である。月面上では重力加速度 gg が地球の約 1/6 になるため,重さは 1/6 になるが,質量 mm は不変である。この W=mg\boldsymbol{W}=m\boldsymbol{g} という式は,重力という「原因」が,質量 mm を持つ物体に g\boldsymbol{g} という「結果(加速度)」をもたらすという因果関係を記述している。

接触によって生じる力

公式

垂直抗力

物体が面に接触しているとき,面から受ける抗力のうち面に垂直な成分を垂直抗力 N\boldsymbol{N} という。

導出

面との接触点において,微視的には無数の原子間力がはたらいている。これらの力を合成したとき,面に平行な成分(摩擦力)を除いた,面に垂直な方向の正味の力を垂直抗力と定義する。物体が面を押し返す力に対する「作用・反作用」のペアとして現れる。

定義

摩擦力

粗い面上にある物体が,面から受ける運動を妨げる方向の力を摩擦力という。

最大静止摩擦力

静止している物体が動き出す直前の摩擦力 FF は,垂直抗力を NN,最大静止摩擦係数を μ\mu として次のように表す。

F=μNF = \mu N動摩擦力

運動している物体にはたらく摩擦力 FF' は,垂直抗力を NN,動摩擦係数を μ\mu' として次のように表す。

F=μNF' = \mu' N
導出

摩擦力に関するこれらの式は,厳密な理論から導かれるものではなく,実験によって得られた「経験則」である。

  1. 静止摩擦力: 外部から加える力 ff と釣り合っている間は F=fF=f であり,μN\mu N はあくまで摩擦力が耐えられる「限界値」を指す。
  2. 動摩擦力: 物体の速度によらずほぼ一定であることが経験的に知られている。

一般に μ<μ\mu' < \mu であり,物体が動き出した瞬間に摩擦力が減少するため,グラフ上では最大静止摩擦力を頂点としてガクンと値が落ちる挙動を示す。

弾性力

定義

弾性力(フックの法則)

自然長から xx だけ変化したばねが及ぼす力 FF は,ばね定数を kk として次のように表す。

F=kxF = kx
説明

線形近似としてのフックの法則 弾性力 F=kxF=kx もまた経験則の一つであり,ばねの変形 xx が十分に小さい範囲でのみ成立する。数学的には,任意の滑らかなポテンシャルエネルギーを平衡点まわりでテイラー展開した際の第1項(線形項)を取り出したものに相当する。変形が大きくなるとこの比例関係は崩れ,最終的には元の形に戻らない「塑性変形」や破断に至る。

公式

自然長を考慮した弾性力

自然長 ll のばねの一端を原点 O\mathrm{O} に固定し,他端の位置を xx とする。このとき物体が受ける弾性力 FF は次のように表す。

F=k(xl)F = -k(x - l)
導出

ばねの伸び(または縮み) Δx\Delta x は,現在の位置 xx と自然長 ll の差として次のように表せる。

Δx=xl\Delta x = x - l

弾性力は常に自然長に戻ろうとする向き(変位の逆向き)にはたらくため,力 FF

F=kΔx=k(xl)F = -k \Delta x = -k(x - l)

となる。

合成ばね定数

公式

並列につないだばね

ばね定数 k1,k2,,knk_1, k_2, \dots, k_nnn 個のばねを並列につないだときの合成ばね定数 KK は次のように求める。

K=i=1nki=k1+k2++knK = \sum_{i=1}^{n} k_i = k_1 + k_2 + \dots + k_n
導出

各ばねの伸びを共通の xx とすると,それぞれのばねが発生させる力 fif_ifi=kixf_i = k_i x である。 全体にかかる力 FF はこれらの和に等しいから,

F=f1+f2++fn=(k1+k2++kn)xF = f_1 + f_2 + \dots + f_n = (k_1 + k_2 + \dots + k_n)x

これを一つのばね F=KxF=Kx とみなすと,係数を比較して K=k1+k2++knK = k_1 + k_2 + \dots + k_n が得られる。

公式

直列につないだばね

ばね定数 k1,k2,,knk_1, k_2, \dots, k_nnn 個のばねを直列につないだときの合成ばね定数 KK は次のように求める。

1K=i=1n1ki=1k1+1k2++1kn\dfrac{1}{K} = \sum_{i=1}^{n} \dfrac{1}{k_i} = \dfrac{1}{k_1} + \dfrac{1}{k_2} + \dots + \dfrac{1}{k_n}
導出

直列の場合,すべてのばねに同じ大きさの力 FF が伝わる。このとき,各ばねの伸び xix_ixi=Fkix_i = \dfrac{F}{k_i} となる。 全体の伸び XX は各ばねの伸びの総和であるから,

X=x1+x2++xn=(1k1+1k2++1kn)FX = x_1 + x_2 + \dots + x_n = \left( \dfrac{1}{k_1} + \dfrac{1}{k_2} + \dots + \dfrac{1}{k_n} \right) F

これを一つのばね X=FKX = \dfrac{F}{K} とみなすと,係数を比較して

1K=1k1+1k2++1kn\dfrac{1}{K} = \dfrac{1}{k_1} + \dfrac{1}{k_2} + \dots + \dfrac{1}{k_n}

が導かれる。