1-2-6. 剛体

Rigid Body

力のモーメントと角運動量

定義

力のモーメント

剛体のある位置 r\boldsymbol{r} に力 F\boldsymbol{F} がはたらいて点Oを回転軸として物体が回転するとき,点Oまわりの力のモーメント M\boldsymbol{M} は次のように表す。

M=r×F\boldsymbol{M} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F}
導出

ベクトルの外積 r×F\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} は,位置ベクトルを r=(rx,ry,rz)\boldsymbol{r} = (r_x, r_y, r_z),力ベクトルを F=(Fx,Fy,Fz)\boldsymbol{F} = (F_x, F_y, F_z) と成分表示したとき,次のように計算される。

r×F=(ryFzrzFy,rzFxrxFz,rxFyryFx)\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} = (r_y F_z - r_z F_y, r_z F_x - r_x F_z, r_x F_y - r_y F_x)

特に2次元の xyxy 平面上の運動において r=(rx,ry,0)\boldsymbol{r} = (r_x, r_y, 0)F=(Fx,Fy,0)\boldsymbol{F} = (F_x, F_y, 0) となる場合は,外積は zz 軸成分のみを持ち r×F=(0,0,rxFyryFx)\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} = (0, 0, r_x F_y - r_y F_x) となる。

幾何学的な視点からは,位置ベクトル r\boldsymbol{r} から力ベクトル F\boldsymbol{F} に向かって右ねじを回すときのねじの進む方向が力のモーメント M\boldsymbol{M} の向きとなる。r\boldsymbol{r}F\boldsymbol{F} のなす角を θ\theta とすると,モーメントの大きさ(外積の絶対値)は次のように求まる。

M=r×F=rFsinθ|\boldsymbol{M}| = |\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F}| = r F \sin\theta
公式

力のモーメントと作用線

剛体のある位置に力 F\boldsymbol{F} がはたらいて原点Oを回転軸として物体が回転するとき,点Oまわりの力のモーメントの大きさ MM は,力の大きさを FF,回転軸である原点Oから力の作用線に下ろした垂線の長さ(うでの長さ)を ll として次のように表す。

M=FlM = Fl
導出

F\boldsymbol{F} がはたらいている位置の位置ベクトルを r\boldsymbol{r}r\boldsymbol{r}F\boldsymbol{F} のなす角を θ\theta とすると,原点から作用線までの距離 ll は直角三角形の幾何学的な関係から l=rsinθl = r \sin\theta となる。 これを外積の大きさの定義に代入すると,

M=rFsinθ=F(rsinθ)=FlM = r F \sin\theta = F(r \sin\theta) = Fl

となり,モーメントが「力」と「うでの長さ」の積で表されることが導出される。

定義

角運動量と慣性モーメント

角運動量

位置 r\boldsymbol{r},運動量 p\boldsymbol{p} を持つ物体の原点まわりの角運動量 L\boldsymbol{L} は次のように定義される。

L=r×p\boldsymbol{L} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p}慣性モーメント

回転軸からの距離が rr である位置に存在する質量 mm の質点の慣性モーメント II は次のように定義される。

I=mr2I = mr^2
導出

角運動量の定義において,運動量 p\boldsymbol{p} は質量 mm と速度 v\boldsymbol{v} を用いて p=mv\boldsymbol{p} = m\boldsymbol{v} と表されるため,角運動量は L=r×(mv)=m(r×v)\boldsymbol{L} = \boldsymbol{r} \times (m\boldsymbol{v}) = m(\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{v}) と計算できる。r\boldsymbol{r}v\boldsymbol{v} のなす角を θ\theta とすれば,その大きさは L=mrvsinθL = m r v \sin\theta となる。

この角運動量 L\boldsymbol{L} の両辺を時間 tt で微分することを考える。積の微分法則をベクトルに適用し,速度 v=drdt\boldsymbol{v} = \dfrac{d\boldsymbol{r}}{dt} と加速度 a=dvdt\boldsymbol{a} = \dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt},および運動方程式 F=ma\boldsymbol{F} = m\boldsymbol{a} を用いる。

dLdt=ddt(r×p)=ddt(r×mv)=m(drdt×v)+m(r×dvdt)=m(v×v)+m(r×a)\begin{aligned} \dfrac{d\boldsymbol{L}}{dt} &= \dfrac{d}{dt}(\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p}) = \dfrac{d}{dt}(\boldsymbol{r} \times m\boldsymbol{v}) \\ &= m \left( \dfrac{d\boldsymbol{r}}{dt} \times \boldsymbol{v} \right) + m \left( \boldsymbol{r} \times \dfrac{d\boldsymbol{v}}{dt} \right) \\ &= m(\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{v}) + m(\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{a}) \end{aligned}

同じベクトル同士の外積 v×v\boldsymbol{v} \times \boldsymbol{v} はゼロベクトルとなるため第1項は消滅し,第2項は r×(ma)=r×F\boldsymbol{r} \times (m\boldsymbol{a}) = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} となる。すなわち,

dLdt=r×F=M\dfrac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} = \boldsymbol{M}

が導かれる。これは,角運動量の時間変化が物体にはたらく力のモーメントに等しいことを意味し,並進運動における運動方程式 dpdt=F\dfrac{d\boldsymbol{p}}{dt} = \boldsymbol{F} に対応する回転運動の基本方程式である。

公式

角運動量と慣性モーメントの関係

慣性モーメントが II,角速度ベクトルが ω\boldsymbol{\omega} である剛体の原点まわりの角運動量 L\boldsymbol{L} は次のように求める。

L=Iω\boldsymbol{L} = I\boldsymbol{\omega}
導出

物体の位置ベクトルを r\boldsymbol{r},運動量を p\boldsymbol{p},質量を mm,速度ベクトルを v\boldsymbol{v} とする。 物体の向心方向の単位ベクトルを er\boldsymbol{e}_r,接線方向の単位ベクトルを eθ\boldsymbol{e}_\theta とおくと,円運動の速度は接線方向を向くため v=veθ\boldsymbol{v} = v \boldsymbol{e}_\theta となる。 角運動量の定義より,

L=r×mv=(rer)×(mveθ)=mrv(er×eθ)\boldsymbol{L} = \boldsymbol{r} \times m\boldsymbol{v} = (r \boldsymbol{e}_r) \times (m v \boldsymbol{e}_\theta) = m r v (\boldsymbol{e}_r \times \boldsymbol{e}_\theta)

ここで円運動の速度の大きさは角速度の大きさ ω\omega を用いて v=rωv = r\omega と表せる。また,回転面に垂直な単位ベクトルを ez\boldsymbol{e}_z とすれば外積の性質より er×eθ=ez\boldsymbol{e}_r \times \boldsymbol{e}_\theta = \boldsymbol{e}_z となる。 これらを代入すると,

L=mr(rω)ez=mr2(ωez)\boldsymbol{L} = m r (r\omega) \boldsymbol{e}_z = m r^2 (\omega \boldsymbol{e}_z)

角速度ベクトルは回転面に垂直な向きを持つため ω=ωez\boldsymbol{\omega} = \omega \boldsymbol{e}_z であり,慣性モーメントの定義 I=mr2I = mr^2 を用いると L=Iω\boldsymbol{L} = I\boldsymbol{\omega} が導出される。

公式

角運動エネルギー

原点まわりの慣性モーメントを II,角速度の大きさを ω\omega とすると,物体の回転に伴う運動エネルギー EE は次のように求める。

E=12Iω2E = \dfrac{1}{2} I \omega^2
導出

物体の運動エネルギーの定義は E=12mv2E = \dfrac{1}{2}mv^2 である。円運動の速度 v=rωv = r\omega をこの式に代入すると,

E=12m(rω)2=12mr2ω2E = \dfrac{1}{2}m (r\omega)^2 = \dfrac{1}{2}mr^2 \omega^2

ここで慣性モーメント I=mr2I = mr^2 を用いることで,E=12Iω2E = \dfrac{1}{2}I\omega^2 が導かれる。

公式

角運動量保存則

物体に中心力のみがはたらくとき,物体の角運動量 L\boldsymbol{L} は保存され,ある時刻 tt において次の関係が成り立つ。

dLdt=0\dfrac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \mathbf{0}
導出

角運動量の時間変化は力のモーメントに等しい( dLdt=r×F\dfrac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} )。 物体にはたらく力 F\boldsymbol{F} が原点に向かう中心力である場合,力の向きは位置ベクトル r\boldsymbol{r} と平行(または反平行)になる。互いに平行なベクトル同士の外積はゼロベクトルになるため r×F=0\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} = \mathbf{0} となる。 したがって,dLdt=0\dfrac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \mathbf{0} が成り立ち,時間経過によらず角運動量 L\boldsymbol{L} が一定に保たれることが示される。

剛体のつり合いと合力

公式

剛体にはたらく力のつり合い

剛体にはたらいている nn 個の力 F1,F2,,Fn\boldsymbol{F}_1, \boldsymbol{F}_2, \dots, \boldsymbol{F}_n がつり合っているとき,すべての力の合力がゼロになり,かつ任意の点まわりのそれぞれの力のモーメント M1,M2,,MnM_1, M_2, \dots, M_n の和がゼロになるという,次の2つの条件を同時に満たす。

{F1+F2++Fn=0M1+M2++Mn=0\begin{cases} \boldsymbol{F}_1 + \boldsymbol{F}_2 + \dots + \boldsymbol{F}_n = \mathbf{0} \\ M_1 + M_2 + \dots + M_n = 0 \end{cases}
導出
力の和のつり合い(並進のつり合い)

質量 MM の剛体を nn 個の質点の集合体とみなす( M=miM = \sum m_i )。ii 番目の質点の質量を mim_i,位置ベクトルを ri\boldsymbol{r}_i,速度ベクトルを vi\boldsymbol{v}_i とし,重心の位置ベクトルを rG\boldsymbol{r}_G と定義する。

rG=mirimi\boldsymbol{r}_G = \dfrac{\sum m_i \boldsymbol{r}_i}{\sum m_i}

重心の速度は vG=mivimi\boldsymbol{v}_G = \dfrac{\sum m_i \boldsymbol{v}_i}{\sum m_i} であり,重心の加速度は aG=miaimi\boldsymbol{a}_G = \dfrac{\sum m_i \boldsymbol{a}_i}{\sum m_i} となる。

ii 番目の質点にはたらく外力を Fi\boldsymbol{F}_ijj 番目の質点から受ける内力を fi,j\boldsymbol{f}_{i,j} とすると,ii 番目の質点に対する運動方程式は次のようになる。

midvidt=Fi+jifi,jm_i \dfrac{d\boldsymbol{v}_i}{dt} = \boldsymbol{F}_i + \sum_{j \neq i} \boldsymbol{f}_{i,j}

これをすべての質点について足し合わせる。

imidvidt=iFi+ijifi,j\sum_i m_i \dfrac{d\boldsymbol{v}_i}{dt} = \sum_i \boldsymbol{F}_i + \sum_i \sum_{j \neq i} \boldsymbol{f}_{i,j}

左辺は重心の加速度を用いて MaGM \boldsymbol{a}_G と表せる。右辺の第2項は,剛体内部の質点同士が及ぼし合う内力の総和である。作用反作用の法則により,fi,j=fj,i\boldsymbol{f}_{i,j} = -\boldsymbol{f}_{j,i} が成り立つため,ペアとなる内力を足し合わせるとすべて相殺され,内力の総和は 0\mathbf{0} となる。 したがって,剛体全体の運動方程式は MaG=FiM \boldsymbol{a}_G = \sum \boldsymbol{F}_i となる。剛体が静止(つり合い状態)しているとき重心の加速度 aG=0\boldsymbol{a}_G = \mathbf{0} であるため,外力の和がゼロになる。

F1+F2++Fn=0\boldsymbol{F}_1 + \boldsymbol{F}_2 + \dots + \boldsymbol{F}_n = \mathbf{0}モーメントのつり合い(回転のつり合い)

原点まわりの ii 番目の質点の角運動量 li\boldsymbol{l}_i について考える。外力 Fi\boldsymbol{F}_i によるモーメントを Mi\boldsymbol{M}_i,内力 fi,j\boldsymbol{f}_{i,j} によるモーメントを ni,j\boldsymbol{n}_{i,j} とすると,角運動量の時間変化はモーメントの和に等しい。

dlidt=Mi+jini,j\dfrac{d\boldsymbol{l}_i}{dt} = \boldsymbol{M}_i + \sum_{j \neq i} \boldsymbol{n}_{i,j}

これをすべての質点について足し合わせる。

ddt(ili)=iMi+ijini,j\dfrac{d}{dt} \left( \sum_i \boldsymbol{l}_i \right) = \sum_i \boldsymbol{M}_i + \sum_i \sum_{j \neq i} \boldsymbol{n}_{i,j}

右辺第2項の内力によるモーメントの総和について考える。作用反作用の法則による fi,j=fj,i\boldsymbol{f}_{i,j} = -\boldsymbol{f}_{j,i} に加え,これらの内力が互いの質点を結ぶ同一直線上にはたらくと仮定すると,モーメントも完全に打ち消し合い ni,j+nj,i=0\boldsymbol{n}_{i,j} + \boldsymbol{n}_{j,i} = \mathbf{0} となる。したがって内力によるモーメントの総和はゼロになる。 剛体が回転せずに静止しているとき,全体の角運動量の時間変化はゼロになるため,外力によるモーメントの総和がゼロになることが導出される。

M1+M2++Mn=0M_1 + M_2 + \dots + M_n = 0
定義

偶力

剛体にはたらく2つの力の大きさが等しく,互いに逆向きであり,かつその作用線が平行で一致しないとき,この2つの力をまとめて1つの力のはたらきとみなし,これを偶力と呼ぶ。

導出

偶力をなす2つの力を F\boldsymbol{F}F-\boldsymbol{F} とする。力のベクトル和は F+(F)=0\boldsymbol{F} + (-\boldsymbol{F}) = \mathbf{0} となるため,剛体の重心を並進させる(平行移動させる)効果は生じない。 しかし,2つの力の作用線が距離 ll だけ離れているとき,任意の点まわりの力のモーメントの和を計算すると,その大きさは M=FlM = Fl となりゼロにならない。したがって,偶力は物体を回転させる効果のみを持つ特有の力系である。

公式

剛体にはたらいている力の合力

剛体中の nn 個の位置 x1,x2,,xn\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2, \dots, \boldsymbol{x}_n にはたらく平行な nn 個の力 f1,f2,,fn\boldsymbol{f}_1, \boldsymbol{f}_2, \dots, \boldsymbol{f}_n を考える。

合力の大きさと向き

合力 F\boldsymbol{F} は各力の和として次のように求める。

F=f1+f2++fn\boldsymbol{F} = \boldsymbol{f}_1 + \boldsymbol{f}_2 + \dots + \boldsymbol{f}_n合力のはたらく位置

合力 F\boldsymbol{F} がはたらく作用線の位置 X\boldsymbol{X} は,力のモーメントのつり合いから次のように求める。

X=f1x1+f2x2++fnxnf1+f2++fn\boldsymbol{X} = \dfrac{\boldsymbol{f}_1 x_1 + \boldsymbol{f}_2 x_2 + \dots + \boldsymbol{f}_n x_n}{\boldsymbol{f}_1 + \boldsymbol{f}_2 + \dots + \boldsymbol{f}_n}
導出

合力 F\boldsymbol{F} と同じ大きさで逆向きの力 F-\boldsymbol{F} を位置 X\boldsymbol{X} に加えたとき,剛体にはたらくすべての力がつり合うと考える。 力のつり合いの条件より,

f1+f2++fnF=0\boldsymbol{f}_1 + \boldsymbol{f}_2 + \dots + \boldsymbol{f}_n - \boldsymbol{F} = \mathbf{0}

となり,合力が F=fi\boldsymbol{F} = \sum \boldsymbol{f}_i であることが確認できる。 また,原点まわりの力のモーメントのつり合いの条件を考えると,力と位置の積の和がゼロにならなければならない。

f1x1+f2x2++fnxnFX=0\boldsymbol{f}_1 x_1 + \boldsymbol{f}_2 x_2 + \dots + \boldsymbol{f}_n x_n - \boldsymbol{F} X = 0

この式を XX について解き,F=fi\boldsymbol{F} = \sum \boldsymbol{f}_i を代入することで,合力のはたらく位置の式が導出される。

重心

定義

重心の定義と性質

物体(剛体)を構成する各部分にはたらく重力の合力(総和)が作用する点を,その物体の重心という。

重心の位置

質量 MM の物体を質量 m1,m2,,mnm_1, m_2, \dots, m_nnn 個の質点の集合とみなしたとき,各質点の位置ベクトルを r1,r2,,rn\boldsymbol{r}_1, \boldsymbol{r}_2, \dots, \boldsymbol{r}_n とすると,重心の位置ベクトル rG\boldsymbol{r}_G は次のように求める。

rG=m1r1+m2r2++mnrnm1+m2++mn=miriM\boldsymbol{r}_G = \dfrac{m_1\boldsymbol{r}_1 + m_2\boldsymbol{r}_2 + \dots + m_n\boldsymbol{r}_n}{m_1 + m_2 + \dots + m_n} = \dfrac{\sum m_i \boldsymbol{r}_i}{M}

この式は,それぞれ別々の物体の重心位置をまとめて,系全体の重心を求める際にも同様に用いることができる。

重心の速度と加速度

位置ベクトルの式を時間 tt で微分することで,重心の速度 vG\boldsymbol{v}_G と加速度 aG\boldsymbol{a}_G が導かれる。

vG=drGdt=m1v1+m2v2++mnvnm1+m2++mn\boldsymbol{v}_G = \dfrac{d\boldsymbol{r}_G}{dt} = \dfrac{m_1\boldsymbol{v}_1 + m_2\boldsymbol{v}_2 + \dots + m_n\boldsymbol{v}_n}{m_1 + m_2 + \dots + m_n}aG=dvGdt=m1a1+m2a2++mnanm1+m2++mn\boldsymbol{a}_G = \dfrac{d\boldsymbol{v}_G}{dt} = \dfrac{m_1\boldsymbol{a}_1 + m_2\boldsymbol{a}_2 + \dots + m_n\boldsymbol{a}_n}{m_1 + m_2 + \dots + m_n}
公式

様々な剛体の重心

一様な密度を持つ基本的な形状の剛体について,その対称性や微小要素の積分計算によって重心の位置を求めることができる。以下に代表的な形状の重心の位置を示す。

棒の重心

長さ ll の一様な棒の重心は,棒の中心を原点にとると xG=0x_G = 0 となる。 線密度を λ\lambda とすると,分子のモーメント和は l/2l/2λxdx=0\displaystyle \int_{-l/2}^{l/2} \lambda x dx = 0 となり,分母の質量は l/2l/2λdx=λl\displaystyle \int_{-l/2}^{l/2} \lambda dx = \lambda l となるためである。

円および円環の重心

半径 aa の円板,および外半径 aa,内半径 bb の円環の重心は,幾何学的な対称性から円の中心を原点にとるといずれも xG=0x_G = 0 となる。奇関数である xx を対称な領域で積分すると結果がゼロになることからも数学的に証明される。

半円の重心

半径 aa の半円板の重心は,円の中心を原点として半円の対称軸上にあり,中心からの距離 xGx_G は次のように求まる。

xG=4a3πx_G = \dfrac{4a}{3\pi}

面密度を σ\sigma とし,極座標系で積分を行うと,モーメント和は π/2π/20a(rcosθ)σrdrdθ=23σa3\displaystyle \int_{-\pi/2}^{\pi/2} \int_0^a (r\cos\theta) \sigma r dr d\theta = \dfrac{2}{3}\sigma a^3 となる。質量は面積 12πa2\dfrac{1}{2}\pi a^2σ\sigma を掛けたものであるため,両者の比をとることで導出される。

扇形の重心

中心角 2θ2\theta,半径 aa の扇形板の重心は,円の中心を原点として対称軸上にあり,中心からの距離 xGx_G は次のように求まる。

xG=2asinθ3θx_G = \dfrac{2a\sin\theta}{3\theta}

モーメント和の積分範囲を θ-\theta から θ\theta までとすると 23σa3sinθ\dfrac{2}{3}\sigma a^3 \sin\theta となり,質量は σa2θ\sigma a^2 \theta となることから導出される。(θ=π/2\theta = \pi/2 を代入すると半円の重心と一致する)

半円環および扇形環の重心

外半径 aa,内半径 bb の扇形環(中心角 2θ2\theta)の重心は,次のように求まる。

xG=2(a3b3)sinθ3(a2b2)θ=2(a2+ab+b2)sinθ3(a+b)θx_G = \dfrac{2(a^3 - b^3)\sin\theta}{3(a^2 - b^2)\theta} = \dfrac{2(a^2 + ab + b^2)\sin\theta}{3(a + b)\theta}

これを θ=π/2\theta = \pi/2 とした半円環の重心は,

xG=4(a2+ab+b2)3(a+b)πx_G = \dfrac{4(a^2 + ab + b^2)}{3(a + b)\pi}

となる。積分範囲の半径を bb から aa にして計算することで導出される。

円弧の重心

中心角 2θ2\theta,半径 aa の細い円弧の重心は,次のように求まる。

xG=asinθθx_G = \dfrac{a\sin\theta}{\theta}

線密度を λ\lambda とし,極座標の円弧の微小長さ adϕa d\phi を用いて積分する。モーメント和は θθ(acosϕ)λadϕ=2λa2sinθ\displaystyle \int_{-\theta}^\theta (a\cos\phi) \lambda a d\phi = 2\lambda a^2 \sin\theta となり,質量は 2λaθ2\lambda a \theta となることから導出される。

球・球殻の重心

半径 aa の中実の球,および外半径 aa,内半径 bb の球殻の重心は,3次元的な対称性から球の中心を原点にとると xG=0x_G = 0 となる。

半球の重心

半径 aa の半球の重心は,球の中心を原点として対称軸上にあり,中心からの距離 xGx_G は次のように求まる。

xG=38ax_G = \dfrac{3}{8}a

密度を ρ\rho とし,xx 軸に垂直な円板(半径 a2x2\sqrt{a^2-x^2})の集合として体積積分を行う。モーメント和は 0axρπ(a2x2)dx=14ρπa4\displaystyle \int_0^a x \cdot \rho \pi(a^2-x^2) dx = \dfrac{1}{4}\rho\pi a^4 となり,質量は半球の体積より 23ρπa3\dfrac{2}{3}\rho\pi a^3 となるため,両者の比から導出される。

半球殻の重心

外半径 aa,内半径 bb の半球殻の重心は,中実の半球の重心の式を重ね合わせて質量の引き算を行うことで次のように求まる。

xG=3(a4b4)8(a3b3)=3(a+b)(a2+b2)8(a2+ab+b2)x_G = \dfrac{3(a^4 - b^4)}{8(a^3 - b^3)} = \dfrac{3(a+b)(a^2+b^2)}{8(a^2+ab+b^2)}円錐の重心

底面の半径が aa,高さが hh の円錐の重心は,円錐の頂点を原点として底面に向かう軸を xx 軸にとったとき,頂点からの距離が 34h\dfrac{3}{4}h となる。底面の中心を原点にとった場合は,底面からの高さ xGx_G は次のように求まる。

xG=h4x_G = \dfrac{h}{4}

底面を原点としたとき,高さ xx における断面の円の半径は相似比より a(hx)h\dfrac{a(h-x)}{h} となる。この円板の集合として体積積分を行うと,モーメント和は 112ρπa2h2\dfrac{1}{12}\rho\pi a^2 h^2,質量は円錐の体積より 13ρπa2h\dfrac{1}{3}\rho\pi a^2 h となり,比をとることで 14h\dfrac{1}{4}h が導出される。

剛体のつり合いの応用

公式

糸と剛体のモーメント

一端の点Aに質量 mm の物体がつるされ,他端の点Oがちょうつがいで壁に取り付けられた質量 MM,長さ ll の棒がある。点Aと壁を水平な糸でつないで静止させたとき,棒が鉛直方向の壁と角度 θ\theta をなしているとする。重力加速度を gg とするとき,糸の張力 TT と壁からの抗力 R\boldsymbol{R} を求める。

張力と壁からの抗力T=12(2m+M)gtanθT = \dfrac{1}{2}(2m + M)g\tan\thetaR=(RxRy)=(12(2m+M)gtanθ(m+M)g)\boldsymbol{R} = \begin{pmatrix} R_x \\ R_y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \dfrac{1}{2}(2m + M)g\tan\theta \\ (m + M)g \end{pmatrix}
導出

水平右向き,鉛直上向きを正とする。剛体である棒にはたらく力は,点Aでの張力 TT(水平左向き),点Aでの物体による下向きの力 mgmg,棒の重心(中央)での重力 MgMg,そして点Oでの壁からの抗力 R=(Rx,Ry)\boldsymbol{R} = (R_x, R_y) である。

剛体の力のつり合いの条件より,各成分の和をゼロとする。

{0=RxT(水平方向)0=RyMgmg(鉛直方向)\begin{cases} 0 = R_x - T & \text{(水平方向)} \\ 0 = R_y - Mg - mg & \text{(鉛直方向)} \end{cases}

これより Ry=(m+M)gR_y = (m + M)g および Rx=TR_x = T が得られる。

次に,点Oまわりの力のモーメントのつり合いを考える。反時計回りを正とすると,張力 TT は棒を反時計回りに回そうとし,重力 MgMgmgmg は時計回りに回そうとする。点Oから各作用線までのうでの長さを幾何学的に求めて式を立てる。

0=lcosθT12lsinθMglsinθmg0 = l\cos\theta \cdot T - \dfrac{1}{2}l\sin\theta \cdot Mg - l\sin\theta \cdot mg

この式を整理し TT について解くと,

lcosθT=(12M+m)glsinθ    T=(2m+M)gsinθ2cosθ=12(2m+M)gtanθl\cos\theta \cdot T = \left( \dfrac{1}{2}M + m \right) g l \sin\theta \implies T = \dfrac{(2m + M)g\sin\theta}{2\cos\theta} = \dfrac{1}{2}(2m + M)g\tan\theta

が導かれる。力のつり合いより Rx=TR_x = T であるため,抗力 R\boldsymbol{R} の成分も完全に決定される。

公式

滑らない条件(転倒条件)

aa の密度が一様な直方体を粗い水平面の上に静置し,床から高さ hh の直方体側面上の点に糸をつけ,水平方向に力 FF で引っ張る。直方体が水平面上で滑ることなく転倒し始めるとき,水平面と直方体との間の最大静止摩擦係数 μ\mu は次の条件を満たす。

μa2h\mu \ge \dfrac{a}{2h}
導出

直方体の質量を mm,重力加速度を gg とする。直方体が引っ張られる側の底面の角を点A,反対側の角を点Bとする。 直方体にはたらく力は,引く力 FF,重力 mgmg,水平面からの垂直抗力 NN,および摩擦力 ff である。

まず,直方体が滑らずに静止している間の力のつり合いを考えると,

{0=Ff(水平方向)0=Nmg(鉛直方向)\begin{cases} 0 = F - f & \text{(水平方向)} \\ 0 = N - mg & \text{(鉛直方向)} \end{cases}

より f=Ff = F および N=mgN = mg となる。

直方体が転倒し始める瞬間,直方体は点Aを支点として浮き上がり,底面は点Aのみで水平面と接触する状態になる。このとき,垂直抗力 NN と摩擦力 ff の作用点はすべて点Aに集中する。 点Aまわりの力のモーメントのつり合いの式を立てると,重力 mgmg は重心(幅の中央)にはたらくためうでの長さは a2\dfrac{a}{2} となり,引く力 FF のうでの長さは hh となる。

0=a2mghF0 = \dfrac{a}{2} \cdot mg - h \cdot F

これを解いて,転倒を始めるために必要な引く力は F=mga2hF = \dfrac{mga}{2h} と求まる。

直方体が「滑る前に転倒する」ためには,この引く力 FF に達した時点で,摩擦力 ff が最大静止摩擦力 μN\mu N を超えていてはならない。すなわち fμNf \le \mu N が必要である。 f=F=mga2hf = F = \dfrac{mga}{2h}N=mgN = mg をこの不等式に代入すると,

mga2hμmg    a2hμ\dfrac{mga}{2h} \le \mu mg \implies \dfrac{a}{2h} \le \mu

となり,物体が滑らずに転倒するための摩擦係数の条件が導出される。